中国不動産13:危機の【解決策】:政府による土地出譲金の【返還】、及び土地制度の【抜本的改革】
本稿は拙稿:房地产13、危机的【解决之道】:政府【退还】土地出让金、【改革】土地制度の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。
【前回までの記事】
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
- 中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
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中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 →【政府独占】による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】
三、中国不動産の【業界危機】
【前章までの要点】
第11回で詳述した通り、現在の中国不動産業界の普遍的危機の本質的原因は、中国政府による「死の制度設計」にある。
- 利益の大部分が確実に国家に帰属するよう制度が設計されている(土地独占競売/オークション・土地増値税・販売価格届出制による利益上限設定等)。
- リスクはすべて不動産会社が負担し、政府は「晴雨を問わず安定した収入(旱涝保收)」を確保する(土地税収の不足は不動産会社の自己補填、損失が出ても還付なし)。
- 政府が全面掌握する計画経済的な土地供給が業界の景気サイクルを人為的に増幅させる(上昇局面では売り惜しみ、下降局面では投げ売り供給)。
- これらの制度設計の組み合わせにより、中国不動産業界の経営リスクは通常の製造業を遥かに上回り、「政府が意図的に不動産業界を破滅させているかのような」制度となっている。

問題の本質(制度設計の不合理性)が特定された以上、処方箋を適切に当てはめさえすれば、問題は迅速かつ根本的に解決できる。
以下にその具体的な改革案を論じる。
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【目次】
- 一、短期:政府による土地出譲金の【返還】----【直ちに有効】な措置
- 1、論理:税を【過剰に徴収】した政府が「吐き出す」のは当然
- 2、即効性:不動産会社の蘇生・サプライヤー債務の解消・未完成マンション問題の解決、民間信頼感の回復、悪循環の断絶
- 3、財源:中央銀行による大規模な貨幣供給(量的緩和)
- 二、中期:土地競売・オークション制度の改革
- 1、【購入者】への【直接競売】方式への転換 → 不動産会社の完全解放
- 2、新しい入札制度の設計案 ---- 「大学入試の志願システム」方式
- 3、「70年一括払い」から「1年単位払い(年払い制)」へ ---- 住宅価格の【抜本的引き下げ】
- 三、長期:【土地出譲金】制度の抜本的改革
- 1、年税率の【動態的】調整 ---- 税の調節機能の回復
- 2、全住民への【普遍的】課税への転換 ---- 財政の「歳入源拡大」と社会的公平性の向上
- 3、移行期の補償措置:「多退少補」原則と公営住宅への安置
- 後記:バーナンキ『行動する勇気』 ---- 中国への示唆
- 【連載】不動産篇V3 目次
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一、短期:政府による土地出譲金の【返還】----【直ちに有効】な措置
1、論理:税を【過剰に徴収】した政府が「吐き出す」のは当然
中国不動産11、中国不動産の「死亡」制度設計:国家のための「税収請負」で死する、という宿命で論じた通り、
中国の不動産会社が連鎖的に経営破綻に至っている直接的原因は、前期に地方政府に「立替払い」した土地出譲金を、その後(景気悪化・住宅購入者の購買力低下等により)十分に回収できないことにある。
- すなわち、不動産会社が政府に「立替払い」した金額は、結果として「過払い」となっている。
- したがって政府は、「過剰に徴収した税(土地出譲金)」を当然に「返還」しなければならない。
- 最終的な原則として、住宅購入者の実際の納税能力に見合った分だけ税を徴収すべきであり、「最低税収の保証責任」を不動産会社に転嫁すべきではない。

2、即効性:不動産会社の蘇生・サプライヤー債務の解消・未完成マンション問題の解決、民間信頼感の回復、悪循環の断絶
見出しのとおり、政府による土地出譲金の返還は、以下に示す悪循環を根本から断ち切る効果を持つ。
現在の悪循環の連鎖:「土地税の立替払いが回収不能 → 不動産会社の経営破綻 → サプライヤーへの代金未払い → 施工の手抜き・建設労働者の賃金不払い → 未完成マンション(烂尾楼)問題 → 住宅購入者への打撃 → 個人消費・経済全体のさらなる悪化 → 住宅価格のさらなる下落 → 土地コストの回収がさらに困難 → さらなる連鎖破綻......」
政府が土地出譲金を返還することにより、上記の悪循環を一挙に断ち切り、社会的信頼感の急速な回復と景気の下振れスパイラルからの脱却が期待できる。その効果は即時的かつ広範なものとなろう。

3、財源:中央銀行による大規模な貨幣供給(量的緩和)
「返還に必要な財源はどこから来るのか」---- これに対する答えは「中央銀行による貨幣創出(いわゆる量的緩和)」であるが、この措置は「一度限り」に限定されなければならない。
「量的緩和」とは、政府が大量の国債を発行し、それを中央銀行(通貨発行機関)が無制限に購入することで、政府に対して実質的に無制限の資金を供給する手法である。
- 量的緩和はいかなる場合も長期的に重大な負の影響をもたらすため、各国政府がこれを「最後の手段」として極力回避してきた経緯がある。
- しかし、中国の不動産危機が「史上最大規模の金融危機」を引き起こしかねない水準に達しつつある現状において、今こそこの手段を行使すべき局面である。
参考:中国不動産12:【史上最大】の【バブル】・金融危機・経済危機となる恐れ
なお、必要な量的緩和の規模は最大でも33.2~79.3兆人民元程度と試算される。
- これは2025年の名目GDP(140兆元)の23~56%に相当する。
歴史上、他の主要国が金融・経済危機に際して実施した量的緩和の規模(対GDP比での政府債務増加率)と比較しても、特別に突出した水準ではない。

- それでいて「過去の負の遺産を一括で清算」し、「詰まりを解消して血液の流れを取り戻す」 ---- まるで救急時の強力な「電気ショック治療」としての効果が見込まれる。
- GDP比数十%の政府債務増加というコストに対して、「史上最大規模の危機」の連鎖を断ち切れるならば、「むしろ安価な代価」と評価できる。
※ 数値の出所:
①中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」で計算した通り、1994年の分税制改革から2024年までの30年間に徴収された土地出譲金の累計は79.26兆人民元である ---- 「返還」に必要な金額がこれを上回ることはありえない。
②中国不動産12:【史上最大】の【バブル】・金融危機・経済危機となる恐れで試算した通り、2024年末時点の中国不動産会社各社の各種未回収債権の合計残高は約33.25兆元と推計される ---- 返還によりこれら企業のさらなる損失拡大を防ぐだけであれば、この金額を超える必要はない。

※ なお、「今日発行した通貨」と、それがもたらす「短期的な恩恵」は、将来必ず「返済コスト」として、全国民が分担することになる。これは「改革コストの国民全体への分散」という基本的な経済学の常識である。
したがって量的緩和による市場救済は厳格に「一度限り」とし、その後の財政収支については抜本的な長期的改革が不可欠である。
また「現在の政府債務がすでに深刻ではないか」という懸念については、「神奇な中国」においては政府自身以外に真実の債務状況を知り得る者が存在しないが、いずれにせよ「史上最大規模の危機」の打開は量的緩和以外に手段がない、というのが現実的な評価である。
二、中期:土地競売・オークション制度の改革
1、【購入者】への【直接競売】方式への転換 → 不動産会社の完全解放
「処方箋を問題の本質に当てはめる」という観点から、中期的な改革の核心は明快である。
不動産会社が連鎖破綻する直接的原因が「前払いした土地出譲金の回収不能」にあるならば、解決策は「不動産会社に土地出譲金を立替払いさせない」ことにほかならない。
- 中国の車ナンバープレート競売と同様に、政府が住宅購入者に対して直接、土地使用権を競売する(税を直接徴収する)。不動産会社はこの競売の「泥沼から解放」される。
- 不動産会社は自動車メーカーと同様に「税負担ゼロ」の状態で、本業・本来の事業 ---- 住宅の設計・建設・品質向上・コスパ改善などに経営資源を全投入できるようになる。
- 不動産会社間の競争軸が「価格のみの入札競争」から、「品質・設計・居住性・コスパ」による健全な競争へと移行し、住宅品質の継続的な向上がもたらされる。
- 「巨額の税金の立替払い・回収困難による急死」という可能性が構造的に排除される。
- さらに、公開競売に参加した購入者数と入札価格を見ることで、不動産会社が市場需要を直接把握できるようになるため、生産計画の合理化・コスト削減・利益率の改善が可能となる。
- これはほぼ「百利あって一害なし」の改革である。
※ 唯一、この改革によって不利益を被るのは中国地方政府のみである。
直接競売方式に切り替われば、民衆は「住宅価格の大部分が実は政府に取られている」という事実を明確に認識し、出価を大幅に引き下げる可能性が高い。その結果、地方政府の土地出譲金収入は大幅に減少するであろう。

2、新しい入札制度の設計案 ---- 「大学入試の志願システム」方式
新制度への移行に際しては、以下の設計上の課題を同時に解決する必要がある。
- 現行では「土地+地上建築物」が一体として価格設定されているが、新制度では両者を分離して価格決定する必要がある。
- 利益の大部分を「土地」段階(政府の収入)に残しつつ、不動産会社にも適正な溢価(プレミアム)収益を確保させることで、建設品質向上への正のインセンティブを与える。
- 実務的な効率性・ルールの明確性・「灰色地帯」の最小化を担保した上で大規模展開が可能な仕組みとする。
以上を総合的に勘案した改革案として、筆者は「大学入試の志願システム」方式を提案する。
【基本的な仕組み】
- 住宅プロジェクトの完成・販売時に、政府と開発業者が共同で「競売大会」を開催する(現行の車ナンバープレート競売に類似)。
- 当該物件の購入を希望する者が一斉に参加し、単一の「入札書(大学入試の「志願票」、及び「実際の成績」に相当)」で、土地と地上建築物の価格・帰属を一括決定する。
- 排序方法:まずは「土地出譲金」への入札価格で足切りラインを設定し(大学入試における特定大学の「投档線」=最低出願点に相当)、このラインを超えた参加者のみが「具体的な部屋番号」の選択に進む(特定大学内部の「専攻選択」に相当)。
- この方式により利益の大部分を「土地段階(政府)」に残しつつ、部屋番号の競合によって生じる「溢価(プレミアム)」は開発業者が受け取ることができ、品質向上への正のインセンティブが生まれる。
- ---- 公平的で、効率的。

【入札書の3項目】

① 土地出譲金の最高出価:
- この金額が政府(税収)に充当される。
- 各参加者の出価が「足切りライン(投档線)」の決定に使われる。
- なお新制度では「70年分一括払い」ではなく、「年額料率」の競落(後述)とする。
※「先に土地を」という設計の下では、「利益の大部分は政府に留める」ことが、現在の税制・制度設計からの変化が相対的に最小限に抑えられ、既得権益者などによる改革への抵抗を低減する効果が期待される。

② 希望部屋番号のリスト(志願表):
- 「第一志望:○棟○号室、最高出価○○万元」、「第二志望:……」と、希望順に記入する。
- この金額が開発業者の収入となり、開発業者は「最低落札価格(建設・諸コストをカバーする水準)」を設定できる。
- 特定の部屋に複数の参加者が入札した場合は最高値提示者のみが落札する。第一志望が外れた参加者は第二志望へ、さらに第三志望へと選考が進む。競合率の高い部屋の「溢価(プレミアム)」は開発業者の利益となり、設計・品質向上へのインセンティブが生まれる。

③ 「志願変更(调剂)」の可否と条件:
- 間取り・棟・階数等の条件を指定した上で、全志望が外れた場合の「調整割当て」に応じるか否かを明示する。
- 志望が全て空振りとなった部屋号と参加者については、システムマッチングまたは開発業者の手動割当てによって調整し、残余分については再入札を実施する。
この方式により、土地価格の決定から地上建築物の価格・帰属決定まで一括して完了する。現行の「先着順」、「窓口販売」に比べ、圧倒的に公平・効率的であり、「顧客への便宜供与」や「サクラ(演じた買い手)」などの不正も源流から排除できる。
※ その他の措置として、一定の「違約金(解約ペナルティ)」制度の設定(財務状況の急変等による解約を一定条件下で認める)、売り場(售楼処)の機能転換(顧客獲得・モデルルーム展示に特化)、開発業者・不動産仲介業者による参加者への基礎教育(入札の仕組み・合理的な志願の立て方等の説明)なども有効と考えられる。
こうした取り組みにより市民の知識水準が向上し、入札価格の合理化が進むとともに、住宅購入という人生最大の支出に対する計画性も高まる。
3、「70年一括払い」から「1年単位払い(年払い制)」へ ---- 住宅価格の【抜本的引き下げ】
土地競売を購入者への直接競落方式に切り替えると、「住宅価格に含まれる巨額の土地税」の実態が一般市民に明らかになる。上海の総額1,000万人民元(約2.33億円)の住宅であれば、そのうちの700~900万元(1.6~2.1億円)もの金額を政府に直接支払う必要があると知った市民の多くは、冷静な損得計算を行うようになるだろう。
- 「700~900万元もの大金を、政府に一括で支払う代わりに、100~300万元で数十年分の賃借をして、残り600万元を別の用途に充てる方が合理的ではないか」という選択肢が現実的に検討されるようになる。
- このような「合理的思考」が広まれば、住宅購入者の直接入札における提示価額は、現行の間接競落における「費用の最終負担者ではない不動産会社」の「代理」提示価額を大幅に下回る可能性が高く、土地の落札価格は急落し、住宅価格も大幅に引き下げられる。
更に、本改革案では、これだけにとどまらず、入札対象そのものも変更することを提案する。
- 現行:「今後70年の使用権を一括売却、70年分一括払い(買断)」
- 改正案:「今後1年の使用権を競落、年払い(毎年自動更新・年額払い)、年額料率は1~3年ごとに動態的に改定」
この変更により、現行では住宅価格に隠れている「住宅総額の約70%」に相当する土地出譲金が「即座にゼロとなる」(以降は別途で毎年政府に支払う形になるため、新築時の購入価格には含まれない)。結果として、新築住宅の購入時に必要な初期支払い額は現在の約30%に圧縮される。
さらに、土地出譲金部分(全体の約70%)に付随する契税(約1~2%)・増値税(約8%)・ローン利息(約10%)等の付随的支出もゼロとなるため、新築住宅購入時の初期支払い総額は、現行比で最終的に「約10%」にまで下がる可能性がある。
※ もちろん、その後は毎年政府に土地出譲金の年額を支払い続けることになる(70年累計では同額となる)。ただし、「支払い期間が大幅に拡張」されることで、初期購入時の財務負担は劇的に軽減される。
特に、住宅ローンは借りなくて済む。「初期支払必要額が90%減」という原因以外にも、厳密に言えば、現行の中国金融法律・規定によると、土地購入に対する住宅ローン融資は認められない(金融監督当局は土地出譲金・税費・行政手数料等へのローン充当を禁じており、住宅ローンは本来「地上建築物部分」のみに対して実行されるべきである ---- もしこの原則が厳格に適用されていれば、住宅価格はとうに大幅に下落していたはずである)ことを踏まえると、初期支払い負担の軽減効果はさらに大きい。
この改革が社会全体にもたらすメリットは計り知れない。
- 住宅購入コストの大幅な低下と生活負担の軽減。
- 消費意欲・出生意欲の大幅な回復。
- 政府の立退き補償コストの大幅な削減と、都市更新・再開発の加速。
- 住宅を「投資資産」として保有する動機の消滅と、より健全な資産形成の促進。

三、長期:【土地出譲金】制度の抜本的改革
最後に、最も根本的で困難な改革が「土地出譲金制度そのものの抜本的改革」である。
参考:中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
土地出譲金の本質は「税」であり、それも「平和時代における人類史上最大の増税」に等しい規模のものである。

かつ現行の徴収方式は極めて歪んでいる ---- 「70年分を一括で徴収」することで税の「調節機能」が完全に失われ、「一部の人のみ課税・一部は非課税、さらに一部は逆に多額の補償金まで受け取る」という、世界的に類例のない不公平な構造となっている。
これは徹底した制度改革を必要とする。
参考:中国不動産6:【史上最大】を競う【利益再分配】:一部の人が、他の人の【数百年分】の年収を【無償で取得】する

1、年税率の【動態的】調整 ---- 税の調節機能の回復
税収の主要な機能は「公共資金の調達」に加え、「調節」(格差の是正、所得の再分配)にある。具体的には以下の「調節」機能が求められる。
- 人々の間の貧富格差の是正:所得税のように、高所得者は多く納め、低所得者は少なく納める(または補助を受け取る)。
- 地域間の発展格差の是正:経済的に発展した沿海地域は多く、内陸・貧困地域は少なく、場合によっては「移転支付(財政移転)」を受け取る。
- 時代間・世代間の再分配:早期(物価・収入が低い時代)は税負担も低く、近年(物価・収入が高い時代)は税負担も高くなるよう、時代に応じて調整する。
「平和時代における人類史上最大の増税」と言われる土地出譲金こそ、これらの調節機能を備えるべきである。

(1)時系列に応じた【動態的】調整
- 不動産上昇局面では毎年の土地入札価格が急上昇するため、隣接する住宅街区(類似した生活環境・インフラを享受)であっても、開発・販売年度の違いだけで土地出譲金の負担額(=ロックされた70年間の実質税負担)が一生分の収入の大部分に相当する差となるケースが生じている。
- これは明らかに不公平であり、「税の第一原則は公平」という基本に反する。
- 解決策は明確である。土地出譲金を「70年分一括払い(70年間税率固定)」から「年払い(税率を動態的に改定、3年ごと改定を推奨)」へと転換し、早期購入者と近年購入者の税負担を平準化する。
具体的な方法として、3年ごとに周辺地块の新規土地の平均落札価格(または平均価格変動幅など)を参照し、過去に成約した土地の年額料率を動態的に改定する。改定時の急激な変化を避けるため、日本の固定資産税における「平滑化機能」(3年間で各年1/3ずつ段階的に調整)を参考にすることを推奨する。特に「旧・70年一括払い方式」から「新・年払い方式」への初回切替時の移行期間については、より長めの平滑化期間を設定することが適切である。

(2)地域特性に応じた税率の差異化
- 地域ごとの年額料率設定に際しては、当該地方政府の都市計画・エリアのポジショニング・旧市街地再開発・インフラ整備計画等や、全体的な財政収支を参照する。
- 特定の住宅地区に「域内居住者のみ入学資格がある学校」等の排他的な資源が存在する場合、その資源に関連する費用を当該地区居住者の土地税に適切に按分することができる。
- 大型公共事業(橋梁架設等)の新規投資が必要な場合には、土地税の臨時増額によるコスト分担という柔軟な調達手段が使えるようになる。
※ ただし、これらの税率変更はいずれも透明な民主的意思決定プロセスを経ることが前提となる。もし当該地区の住民代表が「インフラ整備よりも税負担の軽減を優先する」との意向を示した場合には、地方政府はこれに従わなければならない。
このためには、日本の「地域自治体」制度のような、完備した民主的自治・普通選挙・実権を持つ議会・財政透明性などの確保が必要となる(本稿では詳細を省略する)。
2、全住民への【普遍的】課税への転換 ---- 財政の「歳入源拡大」と社会的公平性の向上
(1)財政の「歳入源拡大」
現行の「一部の人のみ課税・一部は非課税、さらに一部は逆に多額の補助金まで受け取る」という不合理な構造を徹底的に是正し、すべての都市居住者(家族単位でも可)が、現実に土地を使用している限り(例:居住)、等しく土地出譲金を納付する制度へと転換する。
この転換により納税者の基数が最大で2倍(※)程度に拡大するため、「70年分一括払い」から「年払い(単年分)」への移行に伴う財政収入の減少を大幅に補填できる見込みである。
※ 現在の都市人口の大まかな構成(第6回の概算による):
①「棚ぼた受益者」(立退き補償受領者等):約2億人、
②「免税・課税逃れ」層(1994年以前の福利住宅分配受領者・主に高齢者・体制内職員等):約2.7億人、
③「唯一の納税者」(新築住宅購入者):約4.7億人(農村部人口約4.6億人は土地出譲金とは元来無関係)。
改革後の納税者基数は現行の4.7億人から最大約4.7億人の増加(≒倍増)が見込まれる。
(2)社会的公平性の向上
さらに重要な点として、この改革は人々の間の貧富格差を大幅に縮小し、社会的公平性を著しく向上させる。
(試算)現在の中国における貧富格差は世界最高水準に達している可能性がある。
西南財経大学「中国家庭金融調査2017」のデータによれば、最も裕福な14%の家庭が全体純資産の65%(平均1家庭あたり472万元=約1.1億円)を占有しており、この数値からジニ係数を計算すると0.712に達する。OECDの基準では「慢性的な社会的混乱が生じやすい水準」とされるレベルである。

一方、土地出譲金制度の抜本的改革後は、以下の理由から貧富格差が世界最小水準にまで縮小する可能性がある。
● 住宅(土地出譲金)が居住者の総財産・支出に占める比率が極めて高い。したがって、適正かつ公平な土地出譲金制度を導入すれば、最も比率の大きい財産・土地税支出を効果的にコントロールでき、その調節効果は外国の資産税をはるかに上回る規模となる。
● 各居住者の土地税負担額は完全に自分自身の選択(居住地の選択)によって決まる ---- より都心部・利便性のより高い地区に住めば税負担が高くなり、郊外・条件のより劣る地区に移住すれば税負担が低くなる。これは「多く納税すれば多くの便益を享受できる」という公平な仕組みである。
● 重要なことに、中国では政府が土地を完全に掌握しているため、居住者の「引越しコスト」が外国と比べて大幅に低く、居住地の選択が外国よりはるかに柔軟・自由である。外国では土地私有制のもとで引越しに高額の土地売買コスト・取引税費等が伴うが、中国の新制度下ではそのような負担が大幅に軽減される。
● この「より小さな貧富格差」と「より自由な土地税(居住地)の選択権」こそ、土地公有制が生み出しうる真の「制度的優位性」であり、土地私有制の外国には実現できないものである。

(3)納税者意識の覚醒、国民監督による財政支出の合理化
さらに、普遍的な土地税の賦課により、中国市民の「納税者意識・監視意識」が初めて真に覚醒する。
- 「自分が納めた土地税はどこに使われているのか」、「税率は合理的か」、「財政支出に無駄はないか」---- こうした問いへの関心が広がり、地方政府の財政支出に対する全市民の監視が機能するようになる。
- 全市民による監視のもとで、地方政府はGDP・政治実績のための「派手な公共投資の乱発」をやめ、歳入の範囲内で合理的かつ効率的な財政運営を行う動機が生まれる。
- この改革はまた、市民にとってはほぼ「百利あって一害なし」であり、唯一「不利益を被るのは地方政府(財布と面子)」のみである。
3、移行期の補償措置:「多退少補」原則と公営住宅への安置
いかなる制度改革においても、既存の関係者全員への影響を精緻に検討し、困難な立場に置かれる者には合理的かつ必要な補償・移行措置を講じることが不可欠である。
最も直接的な影響を受けるのは、「新制度導入直前に(最も高い価額水準で)新築住宅を購入した者」である。彼らは最高額の土地出譲金を負担し、かつ「今後70年分を買断(一括払い)」している。新たな年払い制度が導入された場合に、これらの人々に対して再度の土地年税を課することは明らかな二重課税となり、補償が不可欠である。
本稿が推奨する補償方式は「多退少補(過払い分還付・不足分追徴)」原則と、公営住宅への安置制度の組み合わせである。
(1)新築(一手)住宅購入者への対応
- 対象者が既に支払った旧土地出譲金(新築住宅価格に含まれていた分)を「今後70年分の土地税の前払い」と見なし、これを「年額換算料率」に変換する。その後、新制度の年額料率と比較し、差額分について「多退少補(過払い還付・不足追徴)」を行い、元の70年使用権が満了するまで継続する。
(例示)購入者Aが2020年に1,000万元で新築住宅を購入(うち70年分土地出譲金700万元、年換算10万元、土地使用権2090年まで)。新制度導入後の年額料率が8万元の場合 → 政府は毎年2万元(=10-8万元)をAに還付、2090年まで継続。
一方、2015年に購入した購入者Bの年換算料率が7万元だった場合 → 新制度の年額8万元で同地区に居住し続けるには毎年1万元(=8-7万元)を追加納付、2085年まで継続。

- この仕組みにより、購入時期が遅いほど(多く支払った人ほど)後の控除が多くなり、購入時期が早いほど(少ししか支払っていない人ほど)後の追加納付が多くなる ---- これは高い公平性を実現する。
なお実際の控除計算においては、物価上昇率やローン利息等の要素も考慮して適切な乗数を設定することが望ましい。
(2)新築住宅を購入した【ことがない】者(「免税・課税逃れ」層)への対応
- 1994年以降に一度も新築住宅を購入したことのない者(主に旧「福利住宅分配」制度により住居を取得した高齢者層等、約2.7億人と推計)は、新制度導入後は控除がなく、満額の年税負担が発生する。

- 各家庭は「現在の居住地に留まり、高い土地税を納める」か、「より郊外に転居して、税負担を下げる」かを、自らの判断で選択することになる(郊外への新居取得コストは、新制度導入で住宅価格が現在の約10%に下がると仮定すれば、それほど高額ではない)。
- 定年高齢者・困難家庭等、新土地税の負担能力がなく・自力での転居も困難な生活困窮層については、相応の救済政策が必要である。たとえば「個人破産制度」(破産宣告を前提に、土地税の減額・免除のもとで現地に居住継続を認める代わりに、高額消費の制限・個人破産名簿への登録等を課す)、または「公営安置住宅」(転居を希望するが郊外新居の取得が困難な世帯を政府の遠郊外安置住宅に受け入れる ---- 政府にとってはコストが低く、これらの世帯が空けた都心部の土地から新たな土地出譲金収入を得ることができる)などが考えられる。
(3)中古(二手)住宅購入者への対応
この点は一手住宅購入者の場合よりも複雑である。
- 二手(中古)住宅購入者は購入代金を全額「前の所有者」に支払っており、「政府への土地出譲金の直接支払い」という形態をとっていない。
- したがって、二手住宅の購入代金に含まれる「土地出譲金相当分(控除の根拠となりうる分)」は、厳密に言えば最初の購入者が支払った少額の土地出譲金の「転換分」のみであり、残余の大部分は前所有者の「地上建築物の値上がり益(キャピタルゲイン)」として帰属する。
- このため、同じく「最近の高値で住宅を購入した者」でも、新築購入者と中古購入者では控除可能額に大きな差が生じ、税負担も著しく異なることになる。これは論理的には正当であるが、道義と社会安定性の観点から問題があり、特別な救済措置を要する。
本稿が推奨する対応案は以下の通りである。
- 方案(a)中古住宅購入者への対応:二手住宅の実際の購入価格の一定比率(同等の新築住宅における土地出譲金の比率を参照)を「政府に支払った土地出譲金相当額」と見なし、将来の新土地年税からの控除額を大幅に認める。これにより中古購入者の税負担を大幅に軽減できる。
- 方案(b)前所有者への対応:上記の「中古購入者への控除」分を前所有者に遡及して追徴するか否かについては、①「遡及なし」方式(操作がシンプルで抵抗が少ない代わりに、前所有者が不当に利益を得た状態が温存される)、②「遡及あり」方式(前所有者に当該金額の一括返納を命じ、同時に売却益に対するキャピタルゲイン税を課す。その後の新土地年税は前所有者・中古購入者それぞれが、自らの購入時の土地出譲金基準で控除を受ける ---- より厳格で公平だが、過去の既存取引に遡るため民間の抵抗が大きい)の二つの選択肢がある。
最終的な制度設計・選択は、専門家や人民代表による詳細な検討が必要である。

後記:バーナンキ『行動する勇気』 ---- 中国への示唆
前FRB(米連邦準備制度理事会)議長バーナンキの著書『行動する勇気:危機と試練の回顧録』は、彼が2008年のサブプライム危機に際して、たとえ自身のキャリアに甚大なリスクをもたらす可能性があるとしても、いかに必要な責任を担い「行動する勇気」を持ったかを詳細に記録した一冊である。

同書の核心的な知見を中国の現状に照らし合わせ、ChatGPTに分析を依頼した結果は以下の通りである。
【ChatGPT補足】バーナンキ『行動する勇気』と中国への示唆
一言でまとめると:「体系的な金融危機においては、逡巡・先送り・道徳的訓誡は、いずれも『局所的な不良債権』を『社会全体のバランスシート不況』へと拡大させる。最も政治的に不人気なタイミングで、早期に、大規模に、集中的に行動しなければならない ---- たとえその後10年間批判されるとしても。」
【バーナンキが繰り返し強調した6つの知見と中国への対照】
① 道徳的判断より、体系的リスクを優先する:
「救うか否かは『誰が破綻して当然か』の問題ではなく、『破綻すれば連鎖反応を招くか』の問題だ」 ---- バーナンキは投資銀行の強欲を個人として嫌悪しながらも、道徳的評価を一時棚上げして体系的安定を優先した。
中国の現状に当てはめれば、「不動産会社は高レバレッジの自業自得」、「民間資本は救わない」という姿勢は、体系的連鎖(不動産会社破綻 → 下請け代金未払い → 建設労働者・資材業者・設計事務所・地方財政への波及)がすでに進行している現状では、致命的に誤った判断となりうる。
② 行動は「早く・大きく・過剰なほど」あるべし:
バーナンキの原則は「救いすぎた」と批判される方が、「なぜ早く行動しなかった」と批判されるよりはるかにましだ、というものであり、彼はこれを「overwhelm the panic(恐慌を火力で圧倒する)」と表現した。
中国の政策は「小さく・遅く・小刻みで・試探的」であり、いずれの行動も「底が確実に支えられた」と市場が確信するに足るものではなかった。
③ 予期の安定は基礎的体力の修復より重要(短期的に):
予期が崩壊した状態では合理的な個人行動が集積して非合理な結果を生む(「みんなが明日はさらに悪くなると思っているから」信用が凍結し、投資が消え、リスクが自己増殖する)。
バーナンキは政策の明確化・高頻度の発信・「どこまで何をするのか」の具体的な底線の開示を行ったが、中国の政策発信は曖昧で底線が不明確なため、居住者は観望を続け、企業はバランスシートを縮小し、銀行は融資を絞り込んでいる。
④ 中央銀行は「批判を引き受ける意思」がなければならない:
バーナンキは議会・世論・陰謀論から批判を浴びることを承知で、すべての「汚れ仕事・不名誉」を連邦準備に背負わせ、財政・銀行・市場が「機能し続ける」ための空間を守った。
中国では金融リスクが高度に政治化・意識形態化されており、「拍板して結果を担う責任者」が存在しないため、各部門が互いに様子見を続けている。
⑤ 「不作為」もまた一つの「激進的な選択」であり、結果はより悪い:
「何もしない」ことは「保守的」に見えるが、体系的危機においては「最も激進で最も危険な賭け」である ---- 「市場が自然に回復する」、「信頼感が自然に戻ってくる」、「不良債権が拡散しない」と賭けることであり、歴史上この賭けは常に負けてきた。
中国は現在、不動産・地方債問題において「時間が解決する・やり過ごせばいい」という賭けをしているが、バーナンキは言うだろう ---- 「あなたは問題が小さくなるのを待っているのではなく、より高いコストでしか解決できなくなるのを待っているのだ」と。
⑥ 救済は「旧来モデルの維持」ではなく「再構築のための時間を稼ぐこと」:
バーナンキは金融システムに問題がないとも、不動産バブルが崩壊してはならないとも考えていなかった。彼の論理は「まず止血し、その後手術する ---- 大量出血の状態で構造改革を試みれば、手術台の上で命を落とす」というものであった。
中国への示唆:地産を安定させることは不動産依存を継続することではなく、不動産会社を救済することは土地財政を継続することではなく、底を支えることはバブルを容認することではない。しかし前提として「システムをまず生き延びさせること」が改革への道を開く。
【中国が学びにくい要因(現実的な制約)】
中央銀行の独立性の欠如、財政・金融・銀行の境界の曖昧さ、金融問題の高度な政治化・意識形態化、「民間/資本家を救済する」という舆論的負担の重さ ---- これらの要因から、中国が2008年の米連邦準備モデルを「そのまま複製する」ことは難しい。しかし問題は、バーナンキから学ばないコストが、「資本家を救済した」と批判されるコストをはるかに上回る可能性が高い、という点にある。
【一言での総括(最もバーナンキらしい言い方で)】
「真の『行動する勇気』とは、改革に踏み切る勇気ではなく、最も不人気なタイミングで、システム全体の底を支える勇気である。」
あなたが今感じている『このまま放置すれば悪循環になる』という不安こそ、バーナンキが2008年に毎日備忘録に書き留めていたものと同じものだ。
以上のChatGPTの分析に付け加えるとすれば、ただ一点 ---- AIが即座に「通透」に理解できる論理を、「神奇な中国」の人間の脳がなぜ、理解できないのか、あるいは理解しようとしないのか、という問いである。
既得権益者・各種の「中国特色」が改革の障害となることは、誰でも予測できる。
- しかし「障害を克服する方法」を議論する前に、まず「問題があることを認識する(あるいは認識しようとする)」ことが不可欠ではないか。
- 「神奇な中国」は現在、この認識のプロセスのどの段階にいるのか ---- この問いへの答えが、すべての結末を決する。
バーナンキの言葉を借りれば:
- 「選択しないことも一つの選択(=賭け)」である。
- 現実を直視せず、「問題を見ようとしない」、「外国の知見に触れようとしない」、「思考する努力をしない」という姿勢が続くならば、硬直し時代遅れとなった巨大な構造物は、最終的に「破壊と再建」という経路をたどるほかない。
- それもまた「大破大立(大きく破壊され、大きく立て直る)」という形の必然的帰結なのかもしれない。
~Fin~
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中国不動産12:【史上最大】の【バブル】・金融危機・経済危機となる恐れ
本稿は拙稿:房地产12、恐将成为【史上最大】泡沫、金融危机,和经济危机の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。
【前回までの記事】
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
- 中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
-
中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 →【政府独占】による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】
三、中国不動産の【業界危機】
Read more中国不動産11、中国不動産の「死亡」制度設計:国家のための「税収請負」で死する、という宿命
本稿は拙稿:房地产11、中国房产业的【死亡】制度设计 ---- 死于“为国【包税】”の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。
【前回までの記事】
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
- 中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
-
中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 →【政府独占】による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】
前回までの要点:
- 1994年の「分税制改革」以降、中国の各地方政府は土地出譲金を大規模に徴収するようになった。
- 土地出譲金の規模は広義の財政収入の33~50%超に達し、その実質は「税」と同義である。
- 土地の「間接競売(土地譲渡金を不動産会社経由で徴収)」方式は国際的に類例のない特異な制度であり、不動産会社に対して不必要な巨大なリスクとコストを課している。
- 「歪んだ土地増値税(土地価値増加税)」制度により、不動産会社は利益が出れば利益を政府に吸い上げられ、損失が出ても補填されない「非対称な構造」に置かれている。
前回までの基本原理分析を踏まえ、本章では現象の背後にある「制度的本質」----中国不動産業界を構造的に死に追い込む「死の制度設計」を総合的に解剖する。
Read more中国不動産8:歪んだ「土地増値税」:不動産企業は「損失のみ強いられ、利益は上げられない」という構造に
本稿は拙稿:房地产8、扭曲的“土地增值税”:让房企【只能亏】、不能(多)赚
の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。
【前回までの記事】
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
- 中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
-
中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 →【政府独占】による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】
前回では下記の内容を論じた:
中国の【土地競売(オークション)】制度は著しく歪んでいる(中国の不動産企業の「コスト側」に影響する):
- 中国の地方政府は土地(=不動産企業の存続に不可欠な「原材料」)を【独占】し、土地競売(オークション)を通して、不動産企業同士の間で激しい価額競争をさせた結果、地方政府の土地譲渡収入を最大化するとともに、不動産企業の土地調達コストも最大限まで引き上げてきた。中国の土地価格が、土地が自由に売買できる外国を大幅に上回っているわけでもある。
- さらに「土地譲渡金」の本質は、地方政府が今後70年分の【税収】(土地使用税、もしくは都市住民の居住税に相当する)であり、「土地競売」制度は実質的に、本来地方政府が担うべき「今後70年間の【徴税責務・機能】」を不動産企業に【強制的に押し付ける】ことに等しい ---- 土地競売の段階で、不動産企業が将来70年分の土地税を「土地使用権譲渡金」として、(将来の住宅購入者=土地税の実質負担者の代わりに)地方政府に一括(毎年分割払いではなく)前払い(最長70年も前倒して)納付させることで。
- しかも、仮に将来住宅購入者の購買力(納税能力)が変化し(開発完了物件の販売価額が下落)、不動産企業が当初の土地原価(土地競売で地方政府に立替納付した土地税)を回収できずに倒産しても、政府は一銭も返還せず、完全に「我関せず」の姿勢をとる。つまり、「土地競売」制度は、「徴税」責務だけではなく、「徴税額保証」の責務も、不動産企業に押し付けた。
- このように歪んだ【土地競売制度】は、中国の不動産企業に巨大な【不必要なコスト(高額な土地原価、及び対応する融資コストなど)】及び【リスク(立替土地原価の回収リスク)】をもたらしており、今日の中国不動産業界の危機を引き起こした【最も核心的な原因の一つ】とも言える。
他方、中国の不動産企業の「収入側」にも、中国ならではの歪んだメカニズムが存在する。それが「土地増値税(土地価値増加税)」であり、不動産企業がより「少ししか稼げず、損しても補填されない」という構造をもたらしている:
- 不動産企業が利益を上げた場合(税引前利益がプラスの場合)、その利益のかなりの部分は地方政府に「土地増値税」として徴収される可能性が高い。
- 一方、不動産企業が損失を被った場合(税引前利益がマイナスの場合)、地方政府は過去の利益が出た年度にすでに徴収した「土地増値税」を返還せず、また後続の利益年度の「土地増値税」への充当も【認めない】(「法人税所得税」とは全く異なる扱いである)。
- すなわち:「利益が出れば、より少ししか手元に残らない;損失が出ても、一銭も補填されない」という構造である。
- このようなメカニズムは、中国の不動産企業の資本蓄積能力(リスク耐性)をさらに【削弱】し、業界の景気循環における変動局面で不動産企業がより容易に【経営破綻】に至る状況を作り出している。また、中国の不動産業界を一般的な製造業よりも「はるかに厳しい」「死の業界」へと変貌させている。
本稿は当初第9回の一部として予定していたが、独立した一章として論じることとした。内容は比較的簡潔であり、主要な論点は上記のとおりである。以下では要点を展開する。
---------------------------------------------
【目次】
- 一、歪んだ「土地増値税」:不動産企業に「利益は減少し、損失は補填されない」を強いる
- 1、利益が出れば、より「少ししか手元に残らない」
- 2、損失が出ても、一銭も補填されない
- 3、【不動産業界のみ】がこの問題に直面している
- 二、中国の不動産業が【死の業界】となった構造 ----【損失のみ】強いられ、十分に利益を上げられず、倒産・死亡が加速する
- 1、一般企業:上昇期には資本を蓄積し、下降期には資本を消耗してリスクを吸収する
- 2、不動産企業:「損失のみ強いられ、利益を上げられない」構造 ---- 倒産の加速
- 3、改めて問う:土地競売を【間接方式から直接方式】に改めないのはなぜか
- 【連載】不動産篇V3 目次
----------------------------------------------
一、歪んだ「土地増値税」:不動産企業に「利益は減少し、損失は補填されない」を強いる
1、利益が出れば、より「少ししか手元に残らない」
「土地増値税」:中国国内において国有土地使用権・地上建築物およびその附属物を譲渡する法人・個人に対し、当該不動産の譲渡によって得た増値額(価値増加分)を課税標準として課される税である。
(参考:土地增值税_百度百科)
土地増値税の具体的な計算方法について、簡単に整理すると下図のとおりである:

- 計算式から見ると、「土地増値税」はおおむね「不動産売買(土地および地上建築物を含む)から得た【税引前利益】」に対して【追加的に】課される税(法人税算定【前】に課される)と近似できる。
※ 課税標準には土地だけでなく、地上建築物の価値増加分も含まれるため、本来は「不動産増値税」と呼ぶべきところ、「土地増値税」と称することで土地のみへの課税であるかのような誤解を招きかねない。
- ある意味において、「土地増値税」の実質的な効果は、不動産企業に対する「法人税(企業所得税)」の実効税率を引き上げることに等しく、地方政府が税引前利益のより大きな部分を【収奪する】構造となっている。
※ 別注1:不動産企業による【新築住宅】の販売に際しては、追加的な「加計控除(超過控除)」が適用される。この加計控除の比率は低くないため、実際には「不動産企業による新築住宅販売」時の土地増値税の課税標準は、「税引前利益」よりやや少なくなる。
他業種の法人・個人による不動産売買、および不動産企業による中古住宅売買等には、この専用の加計控除は適用されない。
※ 別注2:「増値額」(課税標準)が「控除項目」金額の20%を超えない場合は、土地増値税が免除される。
ChatGPTへの照会によれば、大多数の不動産企業の新築開発プロジェクトに適用される土地増値税が主としてどの税率区分に該当するかについて、関連データは入手困難であり、以下の保守的推計にとどまるとのことである:
- 三・四線都市および県域:土地価値上昇率は一般に低く、多くのプロジェクトが第一区分(増値率≦50%・税率30%、または免税)に該当する。
- 二線都市:分化が顕著であり、中心市街地の優良地块では高い税率区分に該当し得るが、多くの一般的な住宅プロジェクトは第一・第二区分(増値率50%~100%・税率40%)が多い。
- 一線都市(北京・上海・広州・深圳等):地価が高く都市価値の増加幅も大きいため、歴史的に(特に2015~2020年の価格上昇期においては)第二・第三区分(増値率100%~200%・税率50%)あるいは第四区分(増値率200%超・税率60%)に該当するプロジェクトが多く出現した。ただし遠郊外・低価格帯の住宅プロジェクトは依然として第一区分にとどまるものも多い。
- プロジェクト類型別:商業施設・オフィスビル・ショッピングモール・改修グレードアップ型プロジェクトは高い増値率になりやすく、一般的な実需向け住宅は低い区分に該当しやすい。
以上から合理的に言えることは:住宅価格・地価の上昇が速い地域(北京・上海・広州・深圳等の一線都市)ほど「土地増値税」が高くなり、地方政府が不動産企業の税引前利益をより多く【収奪し】、企業の手元に残る利益が【より少なく】なる、ということである。
2、損失が出ても、一銭も補填されない
「土地増値税」は多くの点で「法人税(企業所得税)」と酷似している:
- 課税標準:ほぼ税引前利益に等しい(別注1の専用加計控除を無視した場合)。
- 目的:企業利益の一部を政府が受け取るために捕捉すること。
しかし他方で、「法人税(企業所得税)」が持つ最も基本的な「欠損補填(繰越欠損)」メカニズムが【完全に欠如している】:
- 「法人税(企業所得税)」は企業が損失(税引前利益がマイナス)を被った場合、当該損失を後続年度(5年以内)の課税所得から【控除すること】を認めている。すなわち「将来の利益年度に税金を少なく納める」という形で、損失企業に一定程度の「補填」を提供する仕組みである。
- しかし「土地増値税」には上記の「欠損補填メカニズム」が【完全に存在しない】:ある不動産開発【プロジェクト】が損失を被った場合、その損失は100%不動産企業が負担しなければならない。別のプロジェクトが利益を上げた場合でも、そのプロジェクト単独で計算された土地増値税を全額納付しなければならず、損失プロジェクトの損失によって【相殺することは認められない】。
- その結果、「利益が出れば全額課税され、損失が出ても一銭も補填されない」という極めて不公平な構造が生まれている。

3、【不動産業界のみ】がこの問題に直面している
さらに言えば、「土地増値税」は事実上【不動産業界のみ】に適用される税であり:
- 他の製造業(自動車・家電等)には、これに類する【製品値上がり税】は存在しない。したがって「損失のみ強いられ、利益を上げられない」という不公平な問題には直面しない。
- その結果、中国不動産業界は【固有の】「高税負担」問題を抱える業種となっている。
※ 不動産業界は、十分に「製造業の一形態」として捉えることができる(不動産企業の場合、「製造」の環は一般的にサブコン・施工業者への外注となるが)。

前回までの章の内容と合わせて考えると、ほぼ全ての制度設計が中国の不動産企業に「敵対的」といえ、まるで「中国の不動産企業に利益を一切上げさせず、早く損失を出して倒産させたい」かのようである。
これはまさに「死の業界」に他ならない(詳細は次章「房地产11、中国房产业的【死亡】制度设计 ---- 死于“为国【包税】” 」参照)。
【参考】ChatGPTコメント
その問は、既に中国不動産業界の税収制度の核心矛盾に触れている:
①土地増値税の本質
立法の趣旨:1980年代末の設計段階では、土地増値税は「土地投機の防止」と「土地の価値上昇分の捕捉」を目的としていた。土地は国有であるため、政府は「土地の価値上昇は主として政府の行為(都市計画・インフラ整備・都市拡張)によってもたらされるものであり、開発事業者に【完全に】帰属させるべきではない」と考えた。
したがって土地増値税はキャピタルゲイン税(資産の価値上昇に対する課税)に近い性格を持ち、通常の付加価値税や法人税とは異なる。
②「土地の価値下落補助金」がない理由
中国税制において大多数の税種は正の収益がある場合にのみ課税され、負の収益の場合に補助金を支払うメカニズムは存在しない(法人税でさえ欠損の繰越は5年以内が限度であり、補助金は支払わない)。さらに重要な点として、土地増値税は【個々のプロジェクト】を単位として清算されるため、プロジェクトが損失であれば税額はゼロとなるが「逆補填」は発生しない。
したがって指摘されたとおりの構造が確かに存在する:価格上昇時は政府が大きな利益を分け取り、【価格下落時は損失の全てを企業が自己負担する】。
③不動産業界 vs 一般製造業
一般製造業企業:利益が高くなっても、政府が徴収するのは25%の法人税のみ。
不動産企業:法人税に加えて土地増値税も課される(実質的に「【製品の値上がり税】」であり、累進税率は25%を大幅に上回る可能性がある)。
制度上の観点から見ると、不動産企業は確かに「二重課税」の対象となっており、構造的に【高税負担業種】である:
● 住宅価格が上昇すれば、政府が増値収益のほぼ半分を持ち去る。
● 住宅価格が下落すれば、企業の損失は完全に自己負担となり、政府は関与しない。
結果として、不動産企業が直面するリスク・リターン比は【一般製造業に比べて著しく不利】である。
④この制度設計の背景
政府の立場から:土地使用権譲渡金+土地増値税は、本質的に「土地財政への依存」の表裏一体の関係にある。
政治的論理の立場から:土地は国家所有であり、開発事業者は「経営者」に過ぎない。したがって国家が「政府が土地の価値上昇収益を分かち合うのは当然」と考えており、開発事業者の損失を補填しようとは考えない。
⑤公平性の評価
企業経営の観点から見れば確かに不公平である。リスクは全て開発事業者が負担するにもかかわらず、収益の大部分は政府に収奪される。
ただし、制度的論理の観点から中国政府は「不動産は製造業とは異なり、土地は国家資産であり、開発事業者は【委託加工・工賃を得る者】であって完全な市場化された権利主体ではない」と位置付けているため、この規則は政府の論理においては「合理的」とみなされている。
総括:土地増値税は不動産企業に対し、住宅価格上昇期には大部分の利益を吸い上げ、住宅価格下落期には損失を全額自己負担させるという構造を作り出しており、確かに【制度的な不公平】を構成している。
一般製造業と比較して、不動産業界は高税負担・高レバレッジ・高リスクの【特殊業種】であり、その根本的原因は土地の国有制と政府が【土地収益を確実に掌握しようとする】姿勢にある。
二、中国の不動産業が【死の業界】となった構造 ----【損失のみ】強いられ、十分に利益を上げられず、倒産・死亡が加速する
1、一般企業:上昇期には資本を蓄積し、下降期には資本を消耗してリスクを吸収する
ほぼあらゆる業界に「景気循環」が存在する。一般企業にとっては:
- 上昇期:製品価格が上昇し企業利益が増加することで、資本が継続的に蓄積され、リスク耐性が強化される。
- 下降期:製品価格が下落して企業利益が減少・損失が生じるが、蓄積した資本を消耗することで損失を吸収し、「業界の厳冬を乗り越え」て債務超過等による倒産を回避する。

利益を積み上げ資本を充実させることは、動物が「冬ごもりのために食料を蓄える」ことに例えられる。
2、不動産企業:「損失のみ強いられ、利益を上げられない」構造 ---- 倒産の加速
しかし前述の「土地増値税」(前回までの章で論じた歪んだ「政府独占の土地間接競売」などの各種制度設計も含む)により、中国の不動産企業は【人為的に作り出された】「損失のみ強いられ、十分に利益を上げられない」という状況に直面している:
- 業界の上昇期(2021年以前の住宅価格急騰期等)において、利益が十分に蓄積できない(利益は地方政府に収奪されてしまうため)。
- 逆に業界の下降期(2022年以降の住宅価格下落期等)においては、以前に蓄積した資本によって損失を吸収することもできず、政府が過去に徴収済みの土地増値税を返還して不動産企業の損失を補填することもない。
- 結果として、中国の不動産企業は【必然的に訪れる】下降サイクルにおいて、【手をこまねきながら】「倒産を加速させる」しかない。

【参考】ChatGPTコメント
その推理は非常にロジック的で、学術界と業界内部で非公式で多く議論された核心観点に近づいている。ここではより系統的に展開しよう:
①製造業における景気循環のロジック
上昇期:価格上昇 → 利益増加 → 企業が利益と資本金を蓄積 → リスク耐性が強化。
下降期:価格下落 → 利益減少・場合によっては損失 → しかし前期に蓄積した利益がバッファーとなり、企業は通常【大規模な倒産には至らない】。
結果:大多数の製造業企業は景気循環の中で【生き残る】ことができ、業界は変動するが【集団的な崩壊には至らない】。
②不動産の特殊な制度設計
不動産企業の景気循環のロジックは、制度的に【歪曲されている】:
上昇期:
● 土地使用権譲渡金が一括先払いで徴収される(重い前払いコスト)。
● 販売段階において土地増値税が超過収益の大部分を吸い上げる。
● 法人税がさらに利益を分配する。
→ 結果:開発事業者の利益留保率は限定的であり、資本の蓄積は困難。
下降期:
● 住宅価格の下落による損失は全て開発事業者が負担する。
● 土地増値税の清算時には減額される可能性があるが、過去に納付した分の「返還」は行われない。
● 高レバレッジのモデルのもとでキャッシュフローが急激に悪化し、債務超過に陥りやすい。
→ 結果:不動産企業には「上昇期に蓄積し、下降期に消耗する」というバッファー機能が欠如しており、一旦下降サイクルに入ると【業界全体】が財務的困難に陥る。
③制度的原因は「核心的な原因」といえるか
結論として言えば:
● 不動産企業の債務不履行と赤字は、表面上は販売の減少・資金調達の引き締め・市場信頼感の低下として現れる。
● しかしその背後の「深層メカニズム」は、制度的に不動産企業の上昇サイクルにおける利益留保能力を剥奪し、下降サイクルにおいてほぼバッファーを持てない状態に置いていることである。
換言すれば:
● 仮に不動産企業が上昇サイクルにおいてより多くの利益と資本を真に留保できていれば、今日の債務危機は【これほど深刻にならなかった可能性がある】。
● 中国の不動産制度(特に土地財政と土地増値税)は、企業を下降サイクルにおいて「ほぼ裸で立ち向かわせる」構造を作り出している。
④現行制度は「必然的に」困難をもたらすか
「高い必然性がある」と言えるだろう。
● 製造業:市場の景気循環+利益留保 → 企業には自己調整の余地がある。
● 不動産業:市場の景気循環+制度的収奪 → 企業には自己調整の余地がほぼない。
したがって一旦住宅価格が反転下落すれば、業界全体の「普遍的な困難」は【制度設計によって】ほぼ必然の結果となる。
これが近年多くの識者が指摘するように「中国不動産企業の【システム的な困難】は単純な景気循環調整でも企業自体の経営能力の問題でもなく、【制度設計】そのものに起因する【制度的危機】である」と言われる所以である。
3、改めて問う:土地競売を【間接方式から直接方式】に改めないのはなぜか
ここまで論じてきた問題は、ある種の「無力な批判」に映るかもしれない。しかし改めて問わなければならない。
中国政府の立場は(ChatGPTの整理によれば):
- 不動産は製造業とは異なり、土地は国家資産であり、開発事業者は【委託加工・工賃を得る者】であって完全な市場化された権利主体ではない。
- 政治的論理から:土地所有権は国家にあり、開発事業者は「経営者」に過ぎない。したがって「政府が土地の価値上昇収益を分かち合うのは当然」。
しかしならば、なぜ土地から生じる【損失】は、【所有権主体】である地方政府が負担しないのか、という疑問が生じる。
- もし本当に不動産企業を【委託加工・工賃を得る者】と位置付けるならば、不動産企業が負担すべきリスクは【委託加工(すなわち建設・生産)環節のみ】に限定されるべきであり、【土地所有権の価値変動には関与させるべきではない】。
- すなわち、自動車メーカー等の一般製造業のように:自動車の【生産のみを担い】、ナンバープレートの競売(政府が所有権主体)やナンバープレートの価格変動には【関与しない】、という形にすべきではないか。
- 現行の「不動産企業が土地競売=入札オークションに参加する(【あらゆる問題の制度的根源】=間接競売方式)」モデルを、ナンバープレートのような【直接競売方式(エンドユーザーである住宅購入者に直接入札させ、不動産企業を介在させない)】に変更すれば、全ての問題は【一挙に解決できる】。
(詳細は「中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 →【政府独占】による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】」参照)
現行の歪んだ【間接】土地競売方式から、

すでに成熟した事例が存在するナンバープレート競売(エンドユーザーである購入者に【直接】入札させ、メーカー・企業を介在させない)方式に転換すれば、全ての問題が解決される。

AIでさえこれほど明確に把握している問題が、中国という「不思議な国」においていつになれば実行・認識されるのだろうか。
次のAI時代において人間の頭脳がまだ必要とされるかどうかを自問自答しながら、この「不思議な国」には、まず「正常な思考能力」が必要なのかもしれないと感じるばかりである。
~ Fin~
Read more中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 →【政府独占】による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】
本稿は拙稿:房地产7、扭曲的【土地拍卖】:政府垄断抬价、【掩饰】极高的税金,让房企背负【不必要】的【风险和成本】
の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。
【前回までの記事】
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
前回では下記の内容を論じた:
- 1994年の「分税制改革」以降、中国各地方政府は土地出譲金を大規模に徴収するようになった。
- 土地出譲金の規模は極めて大きく、狭義の財政収入の33〜50%以上に達する年もある。
- 土地出譲金は「政府が徴収し政府が使用する」という性質上、実質的に「税」と同義であり、1994年以降の大規模な土地出譲金徴収は、事実上の「巨額増税」に等しい。
- 国際比較においても、中国の土地出譲金がもたらす「実質的な課税効果」は空前のものであり、戦時を除く平和時代においては、「史上最大の増税」と評しても過言ではない。
本章では、こうした財政的背景を踏まえつつ、実務的な観点から中国土地譲渡に際する「土地競売」制度そのものの構造的問題を詳細に分析する。のち、以下の点が明らかになるであろう。
- 「間接競売・税金代替払い」という仕組みは、国際的にほぼ類例をみない極めて特異な制度である。
- この制度は中国の不動産企業に対して、構造的に不必要な巨大なコストとリスクを課している。
- さらに言えば、「土地競売」制度こそが、現在の中国不動産業界の全面危機をもたらした最も根本的な要因の一つであると考えられる。
「目次」
- 一、土地市場:外国の自由取引 vs 中国の政府独占競売
- 二、土地供給:外国の【全面開放】vs 中国の「公的売り惜しみ」
- 三、購入者向けの【直接競売】を行わず、高税負担を【隠蔽】し、より【高値を引き出す】構造
- 四、【間接競売】が不動産企業に課す【不必要】な【リスクと責任】
- 【連載】不動産篇V3 目次
一、土地市場:外国の自由取引 vs 中国の政府独占競売
1、外国:自由な市場取引、【限定的】な競争、地価は過度に【高騰しない】
ほぼすべての先進国において、土地市場は自由な相対取引を原則としている。
- 土地所有者(地主)は、任意に複数の不動産開発会社に声をかけ、それぞれから独立した見積もりを取得し、最高値を提示した業者に売却することができる。
- ただし、個人地主が持つ情報には当然限界があり、市場に存在するすべての不動産会社から見積もりを取得できるわけではない。結果として競合する不動産事業者の数は限られ、最終的な成約価格も過度に高騰することはない。
※ 例:仮に市場に5社の不動産会社が存在し、ある土地に対してそれぞれ1~5万人元/㎡の意向価格を持っているとする。
地主がすべての5社を把握・接触できれば5万元で成約するが、現実には情報制約から接触できるのは数社に限られ(近隣の会社など)、例えば3万元での成約にとどまる可能性が高い。
この場合、地主が損をし、不動産会社(および最終的な住宅購入者)が相対的に利益を得る構造となる。

さらに日本を例に挙げれば、高齢の地主が土地の現在の市場価値を把握していないケースも多く、相場より大幅に低い価格での売却が成立することも珍しくない。
そうした土地を取得した不動産会社は大幅なコスト削減が可能となり、最終的な住宅価格の低下にもつながる。

2、中国:政府による【独占】競売、【全面的】な価額競争、地価は【最高値】に達する
これに対して中国では、都市部の土地市場は自由な相対取引ではなく、地方政府が主導する【独占的】「競売(競り上げ・オークション)」によって運営されている。
(1)独占性
- 中国の都市部の土地は原則として国家所有であり、民間個人・法人は土地所有権を保有・売買することができない。
- 不動産会社が土地を取得するには、地方政府が実施する競売に参加するほかない。
- 地方政府は土地使用権の【唯一の供給者】として、市場を【独占的】に支配している。
(2)競売(競り上げ・オークション)
- 地方政府が土地(使用権)を売却する際には、競売(競り上げ)が義務付けられており、事実上すべての不動産会社が参加する。
- その結果、各社は同業他社全社との【全面的な競争】にさらされ、最終的な落札価格は理論上の【最高値】に収斂する。
- 他社が【応じられない】価格を提示できた企業のみが落札し、事業継続には【不可欠】な土地を確保できる。
※ 前述の例で言えば、土地は地方政府によって一括収用されたのち、全不動産会社を対象に競売(競り上げ)にかけられる。最高意向価格5万元/㎡の企業のみが落札し、3万元しか提示できない企業は土地を取得できず、主力事業が継続不能となり、やがて廃業に追い込まれる。
外国の仕組みとは正反対に、中国モデルでは「地主(政府)が利益を得て、不動産会社(および最終購入者)が損失を被る」という構造になっている。

加えて、資金力に勝る大手不動産会社ほど、競売で有利となるため、中小企業は生き残りをかけて連合体を組み、過剰な競売額を提示せざるを得ない状況に追い込まれる。
これがさらに競争を激化させ、地価を一段と押し上げる。
要するに、この制度は「政府がより多くの税収を確保し、民間がより重い負担を強いられる」ように設計されていると言っても過言ではない。

(3)土地の「必需財」としての特性
- 土地は不動産会社にとって、事業継続の絶対的な前提条件である。「なければ生きていけない」という意味で、まさに「必需財」に等しい。
- 必需財の価格弾性値は低い(需要が価格上昇に反応しにくい)。どれほど高くなっても購入せざるを得ないため、価格は長期的に高止まりする。
※ 中国の若い住宅購入者が「結婚のために家が必要」と感じるのと同様、不動産会社は「事業継続のために土地が必要」であり、「いくら高くても買うしかない」という状況に置かれている。
二、土地供給:外国の【全面開放】vs 中国の「公的売り惜しみ」
1、外国:供給は全面的に開放、大量・並行的な供給が可能
土地の供給面においても、中国のアプローチはほぼすべての先進国と大きく異なる。
先進国では土地の供給は原則として自由市場に委ねられている。
- 売却の意思決定は各土地所有者の裁量に委ねられており、売却の有無・方法・規模はすべて当事者間の合意で決まる。
- したがって不動産会社は、政府の一元的な「競売」スケジュールを待つ必要がなく、複数の地主と同時並行で交渉を進めることができる。十分な人員・資金がある限り、十数件・数十件のプロジェクトを同時に推進することも可能である。
- 地主の中には強硬に高値を要求する「難交渉者」もいる一方で、価格に無頓着な高齢者など、比較的容易に交渉が成立するケースも存在する。
- 「広く網を張る」戦略を取れば、比較的低コストで土地を取得し、早期にプロジェクトを立ち上げることが可能となる。

2、中国:政府主導の「売り惜しみ」、【供給は制限】され、価格は【最高値】に
中国ではこれと対照的に、地方政府が土地供給を意図的にコントロールすることで、需給ひっ迫を人工的に作り出し、より高い売却収入を確保しているとみられる。
- 「売り惜しみ(捂盘惜售)」という言葉は、通常は不動産会社が開発・販売ペースを故意に遅らせ、地価・住宅価格の上昇を待つ行為を批判する文脈で使われる。
- しかし実態をよく見れば、むしろ地方政府自体がこの「売り惜しみ」の最大の実践者であることがわかる。
- 土地供給量を意図的に絞ることで、人工的な供不応求を演出し、より高い売却収入を確保しているからである。
【ChatGPT補足】
● 地方政府は【確実に】土地供給のペースを意図的にコントロールしている。土地を過剰供給すれば価格が下落し、財政収入が減るだけでなく、地域の不動産市場の安定も損なわれ、金融リスクにもつながるためである。
● 典型的な手法:年間供給量を小刻みに放出(計画量の一部のみを供給)、あるいは郊外・条件の劣る土地を先に供給し、都心部や優良地を後回しにする。これにより、限られた土地をめぐって不動産会社同士が激しく競合する状況を確保する。
● 結果:激烈な競売(競り上げ)により地価が上昇し、政府の土地出譲金収入が増加する。同時に住宅価格も押し上げられる。
● 学術・業界研究の多くが指摘するように、地方政府は「土地供給の数量コントロール」と「供給地点の選択」を組み合わせることで間接的に地価・住宅価格を誘導しており、これはほぼ「合理性の下での必然的な選択」である。
● 結論として、土地供給は地方政府によって独占・調整されており、「政府版の売り惜しみ」と呼ぶことができる。
地方政府が土地供給を意図的に抑制している状況下では、不動産会社は十分な資金・人員を有していても、土地の放出を待つしかない。
旺盛な需要(2009年・2016年など)と供給制約が重なれば、新築住宅は希少財となり、一部の大都市では「抽選購入」や「数千人争奪」といった現象が常態化していた。

さらにマクロ的に見れば、土地供給の制約は中国全体の都市開発ペースを抑制している ---- 個別の宅地開発スピードは世界最速水準にあるとしても、市場全体の住宅供給能力は人為的に制限されているため、需要の急増に対する応答速度は先進国の市場化された都市に比べて必ずしも速くない。
※ ChatGPT補足
【個別地块の開発スピード】
中国:
● 行政的(場合によっては強制的)な土地収用権を背景に、1~2年で大規模区画の収用・立退き・造成を完了できる。
● 重点事業(開発区・再開発・五輪工事等)における収用速度は海外の研究者が驚くほどである。
欧米:
● 土地は私有制のため、全地権者との個別交渉が必要であり、法律が財産権を保護している。
● 「釘子戸(立退き拒否者)」が1人いるだけでプロジェクト全体が止まりかねず、訴訟や長期調整が必要となり、5~10年以上かかる事例も多い。東京・ニューヨーク・ロンドンの大型再開発でも10年超が常態である。
結論:個別地块レベルでは、中国モデルは先進国より圧倒的に速い。
【都市全体の供給速度】
中国:
● 政府独占と供給コントロールにより、不動産会社の生産能力が人為的に抑制される。その結果、新築住宅の全体的な供給速度は遅くなり、住宅購入の待機期間が長期化する。
● 大規模な改善需要に対する「市場の応答速度」は、土地市場が市場化された先進国に比べて劣る可能性がある。
欧米:
● 土地の大半は民有であり直接取引可能。開発業者が需要を見込めば大量取得・急速開発ができる。
● 個別地块は遅くとも、市場全体では複数プロジェクトが並行進行するため、需要増に対する供給の反応速度は中国より速く、住宅価格上昇局面の持続期間も相対的に短い。
結論:都市全体レベルでは、中国モデルは先進国より「かえって遅い」可能性があり、特に大規模需要に直面した際にその差が顕在化する。
三、購入者向けの【直接競売】を行わず、高税負担を【隠蔽】し、より【高値を引き出す】構造
1、「直接競売」と「間接競売」
中国において、「土地競売」のほかに、車のナンバープレートも、政府独占で車の購入意向者に【競売】されている。
※ ナンバープレートを手に入れないと、車を購入しても道路に出せない(実質利用不可)ため、ナンバープレートの競売は実質、土地競売と同じく、「公共資源(道路)使用権」の競売と見なされることができる。
- 車ナンバープレートの競売実施者は、土地競売と同一(地方政府)であるが、その形式は以下のように根本的異なる。
- ナンバープレート競売:競売実施者(政府)がエンドユーザー(自動車購入希望者)に【直接競売】を行い、落札代金も【直接】政府に支払われる。
- 土地競売:エンドユーザー(住宅購入者)は競売に直接【参加しない】。まず不動産開発会社が「代わりに」政府競売に参加して土地を取得し、そして建物完成後に住宅購入者に売却することで、当初の競売代金を「回収・精算」する形になる。
すなわち、エンドユーザー(自動車購入者/住宅購入者)が【直接競売】に参加するか否かに基づき、「直接競売(ナンバープレート)」と「間接競売(土地)」に分類できる。

2、極めて高い税負担の【隠蔽】
直接競売(ナンバープレート)においては:
- 購入者は競落価格(上海では10万人民元超=約234万円に達することもあり、車体価格を上回る場合さえある)を十分に把握しており、「この金額は政府に支払う税と同質のものだ」と明確に認識できる。
- 多くの購入者が「鉄板一枚でこれほど高いとは強奪同然だ」と強く反発するのは、税負担の所在が透明であるからにほかならない。
※ 車ナンバープレートの重量で割り算すると、1グラム当たりの価額は、黄金(ゴールド)を超える計算になる。

これに対して間接競落(土地)においては:
- エンドユーザーである住宅購入者は土地競売に参加しないため、土地価格に関してほぼ何の情報も持ちあわせていない(土地価格が数百万人民元=数千万円・数億円に達することも、それがナンバープレート数十枚分に相当することも、まったく知らない)。
- 住宅購入者の目に見えるのは「不動産会社から住宅を購入した」という事実のみであり、「住宅価格に数百万元の土地コスト(地方政府への事実上の税金)が内包されている」という現実を認識することは極めて難しい。
※ 不動産1:中国不動産の真の本質:70年で【価値がゼロ】になる「耐久消費財」で論じた通り、
住宅の本質は「土地権利」と「地上建築物」の複合体である。住宅購入とは、この二つをパッケージで取得することを意味する。
そのうち「土地権利」の部分は実質的に地方政府への税収に相当するが、現行制度ではナンバープレートのような一括永久取得ではなく、70年ごとの「更新納付」が必要であり、住宅購入者は「子々孫々にわたって土地の費用を負担し続ける」構造となっている。
こうした認識の欠如により、多くの住宅購入者は「支払った全額が自らの資産である」と誤解しがちである。
しかし実際には、自動車購入時の「ナンバープレート代(政府への支払い)」に相当する「土地価格」は、不動産会社を経由してすでに政府に「納税」済みであり、購入者の資産として残るのは「地上建築物」部分のみである。

以上を整理すると、土地競売をエンドユーザーの住宅購入者に直接【行わない】現行制度は、「住宅価格の大部分(土地代)が事実上政府への税として支出されている」という基本的事実を覆い隠す機能を果たしている。
3、より【高い価格】を引き出す「隠蔽のメカニズム」
仮に土地を「直接競売」方式に切り替え、住宅購入者が地方政府に直接競売するとしたら、どうなるだろうか。
- 上海で総額500万人民元(約1.17億円)の住宅のうち300万元(60%=約7,000万円)にあたる土地代を、購入者が直接「上海市人民政府」に振り込むとすれば、果たして同額を納めようとする人が、どれほどいるだろうか。
- 数年・数十年間の蓄積、ないし家族全員の資産を総動員し、更には30年ローンまで組んで、ようやく捻出した300万元を、政府口座に直接振り込む、という行為を前にした購入者の心理的反発は計り知れないものがあろう。
- 特に「地上建築物の価値が土地代よりも安い」可能性がある点(上海の500万元物件のうち、建築物の価値が僅か100万元程度にとどまる可能性)を認識すれば、なおさらである。
- 合理的に考えれば、住宅購入者が土地に対して「建築物と同程度の価格(例:建築物100万元なら土地も100万元程度)」しか提示しないケースも十分ありうる。
- その場合、土地の落札価格は現行の間接競落方式に比べて大幅に低下する可能性があり、現行の【三分の一】程度にとどまる試算もある(100万元÷現行300万元)。
これにより住宅購入者の負担は大幅に軽減されるが、地方政府の財政収入は相応に激減することになる。
更に、こうした「土地競売の直接競落化」こそ、現在の中国不動産業界の危機を根本的に解決する方策の一つとして論じられている(後続章:房地产11、中国房产业的【死亡】制度设计 ---- 死于“为国【包税】” を参照)。
総括すれば、現行の間接競売方式は、住宅購入者が「支払った金額のほとんどが政府への税として消えている」という事実を認識しにくくすることで、土地の合理的な市場価値を上回る価格を許容させる、という心理的・制度的メカニズムとして機能しており、これが住宅価格の高騰を構造的に支えてきたと言える。
四、【間接競売】が不動産企業に課す【不必要】な【リスクと責任】
1、【不必要】な【リスク】:土地【取得コスト】の【回収リスク】
直接競売(ナンバープレート)においては:
- エンドユーザーが直接参加するため、競売での提示価格は本人が支払える【範囲内】に収まる。
- 万が一経済不況などにより、エンドユーザーの購買力・価額提示意欲が低下しても、ナンバープレートの競落価格に即座に反映され、政府の収入が減少するだけで済む。自動車メーカーまでは影響が及ばない。
- 即ち:直接競売におけるエンドユーザーの購買力変化に伴うリスク(ナンバープレートの価額下落)は、競売実施者(地方政府)が引き受けることになる。

これに対し、間接競落(土地)においては:
- 不動産会社が先に間接競売する(エンドユーザーの「代わりに」、政府に土地代金を立替払いし、後から住宅購入者から「回収・精算」する)仕組みとなっている。
- このため、「競売・支払いを行う者(不動産会社)」と「最終的に土地費用を負担する者(エンドユーザーの住宅購入者)」が一致しない。
- この構造的な乖離が「土地【取得コスト】の回収リスク」を生み出している。
※ 本質的には「立替金の回収リスク」に他ならない。銀行与信担当者であれば誰でも認識するように、これは製造業における主要リスクの一つである。立替金残高が大きい企業については、立替先の属性・信用力・回収期間・将来の返済能力の変動リスク等について精査するのが通常である。
さらに言えば、「立替」は通常、信頼関係が構築された取引先・長期取引先に対してのみ行われ、社内では与信・審査プロセスを経ることが求められる。

ところが、不動産会社が、将来の住宅購入者の購買力を「事前に」予測することは、構造的に【不可能】である。
- 競売段階では、誰が購入者となるかさえ不明であり、まして将来の購買力を見通す根拠も手段も存在しない。
- その結果、不動産会社が競売価格を決定する際に依拠できるのは、「住宅価格は永遠に上昇する」という「信念(信仰)」のみであり、「拍地を断念すれば即廃業」という二者択一の状況の中で、【目をつむって】競売額を提示するほかなかった。

この「(住宅価額が永遠に上昇という)信念に頼った競売」が続く限り:
- 住宅価格の上昇局面(2021年以前)では土地コストが概ね回収されるためリスクは顕在化しないが、価格下落局面に転じた途端に問題が表面化する。
- 2020年のコロナ禍による経済的打撃が住宅購入者の購買力を大幅に削いだ局面では、多くの不動産会社が地方政府に立替払いした多額の土地コストを回収できなくなり、経営悪化・債務不履行・破綻が相次いだ。
2021年以降の中国不動産業界の広範な危機は、主に【このメカニズム】によるものである。後継章:房地产11、中国房产业的【死亡】制度设计 ---- 死于“为国【包税】” を参照。

2、【不必要】な【責任】:政府への「税収保証」責任の転嫁
前回で論じた通り:
- 政府の「土地売却収入」の実質は「土地使用権の出譲代金」、すなわち「今後70年間の土地使用に係る費用の一括前払い」である。
- その「政府が徴収し、政府が使用」という性質から見て、実質的には「土地に対する税金」に等しい。
実質土地税である以上、ほぼすべての他国においては:
- 土地・不動産に対する税(固定資産税等)は、資産価値に基づいて定期的に調整されるのが通常である。
- 固定資産税の重要な機能の一つは「貧富格差の是正」であり、資産価値の変動に応じて税負担を調整することが本来の姿である。
ところが、中国の土地出譲金は「70年分を一括前払い」ということは:
- 将来70年分の税額が事前に固定化され(言い換えれば、不動産会社の一括前払いによって【保証された】」)、「将来の状況がどう変化しようとも、政府は一切関与しない」ことを意味する。
※ 不動産会社が事前に建替払いした土地譲渡金が、事後にエンドユーザーの住宅購入者から全額回収できまいとも、そのせいで多額赤字・債務不履行・倒産に追い込まれようとも、中国政府の「知ったことじゃない」。
- そして、資産税の格差是正機能も、景気悪化局面での減税措置機能も、すべて失われる。
- これは税の機能を根本的に形骸化させる「怠慢な制度設計」と言わざるを得ない。

総括すると:
- 現行制度下において、中国の不動産会社は事実上「今後70年分の土地税を確実に政府に届ける【保証人】」の役割を強要されている。
- その後のリスク(地価変動リスク・住宅購入者の支払能力変化リスク等)はすべて不動産会社に帰属し、仮に損失が生じても、政府は一切救済しない。
- これは「損失は民間が被り、利益は政府が独占する」という非対称な制度設計であり、いかなる業種においても、これほど一方的な制度的介入は稀である。
※ 銀行の信用審査の観点からすれば、現行の制度設計のもとに置かれた中国不動産業界は「制度的リスクが極めて高い業種」に分類されるべきであろう。これほどの構造的な一方的リスク負担を課される業種は他に類を見ない。

3、本末転倒:土地競売では「価格のみ」が評価基準となり、【本業】が【軽視】される
直接競売(ナンバープレート)制度においては:
- 自動車メーカーはナンバープレートの競売に参加する必要がなく、多額の代金を立替払いする必要もない。その分のリソースをすべて【本業(自動車の生産・品質向上)】に投入できる。
- メーカー間の競争は「品質・性能・デザイン・コスパ」といった正当な競争軸で展開され、消費者はより高品質の車製品を享受できる。
※ ナンバープレートの直接競売制度は、自動車業界に、他業種にはない「需要予測機能」を提供する ---- 前月の競落件数は翌月の購入需要の先行指標となり、メーカーは需要に即した生産計画を立てやすくなる。
経済学的にも、この種の需要予測・受注生産化が、製造業の利潤最大化に資することは明らかである。

これに対し、間接競売(中国土地)制度においては、状況は正反対となる。
- 不動産会社は多額の土地税(時には建築総予算の数倍にも至る)を立替払いしなければならず、土地コスト回収リスクに加え、多額の資金調達コストも発生する。多くの不動産会社はその土地税の関連負担で精一杯。
- 中国の土地競売は原則純粋な【価額競争】であり(※)、物件の「品質・内装・設計・コスパ」などの不動産企業の【本業】の競争力は逆に全く評価基準にされない。そして、競売土地は原則落札企業が独占開発となるため、同業他社との競争はもはや存在せず、「品質を向上させる」というインセンティブも生じない。
※ 2020年前後から、一部の地域においては「競売上限額」が試行設定され、競売参加企業の提示価額が上限額を超えた場合のみ、「くじ引き」や「設計案比べ」などの代替案で、落札企業を決定するようになったものの、その量は極めて限られていた。
また、2021-2022以降、そういう代替案が「全国22強都市」で普及し始めたものの、後継年度の中国不動産業界不況の下で、上限額が設定されても、競売参加企業は上限額まで提示できないケースが多く、結果的には、純粋な【価額競争】の段階に留まる。
- 更に、購入者側も、十数年前の住宅供給が逼迫していた時代から、「買えるかどうか」のみを気にしており、住宅の品質・仕様などにはほとんど関心を払わなかった(必要であれば後からリノベーションすればよいという発想)。
- この状況下で、不動産会社の事業存続にとって最も重要な要素は、もはや「品質・内装・設計・コストパフォーマンス」などの本業競争軸ではなくなり、「スピード」の一点に尽きる。
- ---- 竣工・販売が早ければ早いほど、住宅価格変動リスク・土地コスト回収リスクへの暴露時間が短縮され、資金調達コストも低下し、高い回転率が高い収益に直結するからである

結果として、中国の不動産会社間の競争は、土地競売における「価格競争」と「いかに長く生き残るか」という二点に集約されるようになった。
そして、土地競売が価格のみを基準とする以上、残るのは「恶性価格競争」のみであり、競売価格の妥当性を検証する手段がない状況の下では、「賭け」的競売が常態化した ---- 土地=不動産企業存続の必須品である以上、その賭けもやがて「命賭け」になる。
これは昭和期の「チキンレース」になぞらえることができる。複数の参加者がバイクで崖に向かって突進し、ブレーキを踏んだのが一番遅い者が「勝者」となる。
---- そういうレースに勝ちたければ、「命を捨てる」覚悟で挑まなければならない。早かれ遅かれ「最後までブレーキを踏み損ない、崖から墜落死する」ものが出るだろう。
近年の中国において、かつて豪胆でとんでもない巨額で「地王」と呼ばれる高価土地を競り落とした不動産企業が、相次いで経営破綻した事例は、まさにこの構造の必然的な帰結である。

こういう「価格競争のみ・品質競争なし」構造のもたらす結果として:
- 地価と新築住宅価格は上昇し続ける一方、住宅品質は低下の一途をたどっている。
- 不動産会社の資金は土地の高値落札に費やされ、地上建築物にかけるコストは削られる一方となる。
- 2010年前後から頻発するようになった「豆腐屑(手抜き)工事」問題は、こうした悪循環の必然的な産物である。

4、進退両難:参加【したくない】が、不参加では【廃業しかない】
なら、「不動産会社は自ら望んで土地競売に参加しているのか」と問うと、答えは明白である。
- もし「選択の余地があれば」、誰が好んで、多額の借入を抱えて、回収・ないし倒産リスクまで取って、政府の70年分の税金の立替払いなんかに絡もうとするのだろうか。
- もし「選択の余地があれば」、不動産会社は自動車メーカーと同様に競売の泥沼から抜け出し、本業=良質な住宅の供給・中国の住宅水準の向上に専念したいと願っているはずである。
しかし、現実の「生存か・廃業か」という二者択一の前では、理念は後退するしかない。土地を取得しなければ主力事業が立ちゆかず、早晩廃業に追い込まれる。
中国の不動産会社が最終的に「競売への参加」を選択してきた理由は、それ以外の選択肢が存在しなかったからである。

まとめ:以上の分析をまとめると、以下の三点が明確に導かれる。
- 中国の土地(競売)制度は、国際的に見てもほぼ類例のない・極めて特異な設計となっている(この制度の源泉である香港を除いて)。
- この制度は中国の不動産業界に対して、構造的に不必要な巨大なリスクと負担を課してきた。
- それどころか、この制度設計こそが、現在の中国不動産業界の危機をもたらした最も根本的な要因の一つであると評価することができる。
最後のおまけとして、ChatGPTの補足を展開する。
【ChatGPT補足】
● 中国の土地出譲制度(政府による土地供給独占+不動産会社による使用権競落+住宅価格による地価の間接転嫁)は、世界で唯一の制度モデルである。
● この「独自性」は過去20年間の繁栄をもたらした一方で、中国不動産の体系的危機の種を内包していた。
● 不動産会社の役割:政府と住宅購入者の間に置かれた「資金のバッファー(緩衝器)」として機能し、土地財政制度に伴うすべてのリスクを事実上引き受ける立場に置かれた。
● 帰結:短期的な超過利潤の享受 → 高レバレッジ競争の激化 → 価格ピーク後の体系的崩壊、という経路を辿った。
● 学術的主流見解:多くの中国人研究者(特にここ数年)が「不動産危機の根本原因の一つは土地出譲制度の不合理性にある」と認めるようになっている。政府が土地財政を主要収入源としたことで、不動産会社は高地価のもとで借入を積み重ねて土地を競落せざるを得ず、これが体系的リスクの温床となった。
● 代表的な論者:
(1)陳淮(元住建部政策研究センター副主任)「不動産企業の資金繰り悪化は経営問題ではなく、土地コスト制度が不動産会社を地方財政の『ATM』にした結果である」
(2)厲以宁(故・北京大学教授)「中国の不動産問題の核心は土地制度にあり、市場メカニズムの問題ではない」
(3)劉世錦(全国政協経済委員会副主任)「不動産調整は価格・信用だけでなく、土地出譲メカニズムを改革し、土地を地方財政から切り離すことが不可欠である」
あ~あ、何度も言った通り、
どうやら、「道理はすでに多くの人に理解されている」。
但し、「誰にも、現実を変える力はなかった」、というのが中国の現状であろう。
~Fin~
【連載】不動産篇V3 目次
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
- 中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
- 中国不動産6:【史上最大】を競う【利益再分配】:一部の人が、他の人の【数百年分】の年収を【無償で取得】する
- 中国不動産7:歪んだ「土地競売」制度 → 政府独占による価格吊り上げ、極めて高い税負担の【隠蔽】、そして不動産企業に課される不必要な【リスクとコスト】(本稿)
不動産9、中国の住宅価格のうち【最大80%】が【税金】であり、税率は日本の【10倍】に達する可能性もある(暫定)
ご興味のある方は、先に旧稿の房子里到底有多少【税】?をご参考ください。
不動産10、中国不動産という「華やかな外衣」に隠された【奴隷社会】(暫定)
三、中国不動産の【業界危機】
- 不動産11、中国不動産業の【死亡】制度設計——「国家のために【税金を肩代わり】する」ことによる崩壊
- 不動産12、【史上最大】のバブル・金融危機・経済危機となる恐れ
- 不動産13、危機の解決策:短期的には政府による土地使用権譲渡金の【返還】、長期的には土地制度の【抜本的改革】
Finale:
「アルバイト料先払い円ピツ」——日本の小学生でも、約【50年前】から分かっていた『ドラえもん』の物語(暫定)
中国不動産6:【史上最大】を競う【利益再分配】:一部の人が、他の人の【数百年分】の年収を【無償で取得】する
本稿は拙稿:房地产6、堪比【史上最大】的【利益再分配】:一部分人【免费获取】另一部分人【几百年】的年收入
の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。
【前回までの記事】
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
前回では、下記の内容を論じた:
- 1994年の「分税制改革」以降、各地方政府は「土地使用権譲渡金」を大規模に徴収するようになった。
- 「土地使用権譲渡金」の金額は甚大であり、従来の財政収入の33%~50%以上を占めることもある。
- 「土地使用権譲渡金」は「政府が徴収し、政府が使用する」という性質上、実質的に「税」とほぼ同一視できる。したがって、1994年以降の土地使用権譲渡金の大規模な徴収は、実質的に「巨額増税」に等しい。
- 他国の経験と比較しても、中国の「土地使用権譲渡金」がもたらす「増税効果」は空前のものであり、戦時を除けば平和時において、この増税の規模は【史上最大】といえる。
また、前回では以下の点を簡単に言及した:
- 「土地使用権譲渡金」を実際に負担しているのは【一部の人のみ】であり、【他の人は負担していない】。
- その結果、中国の土地使用権譲渡制度は、実質的に【人為的に】都市住民を【三つの階級】に分断している ---- 土地使用権譲渡金の:「免税・脱税者」、「唯一の納税者」、そして逆に「棚から牡丹餅で一夜にして富裕になる者」。
- これは恐らく人類【史上最大】の「利益再分配」の一つといえる。
本稿・「不動産篇V3」の第6回において、土地使用権譲渡金がもたらす「利益再分配」を詳細に分析する。
【目次】
- 一、人為的な「階級分断」:
- 二、一部の人が、他人の【数百年分】の年収を【無償で取得】する
- 三、【史上最大】に匹敵する【利益再分配】
- 四、利益再分配を【容認】した【原因】とは?
- 【連載】不動産篇V3 目次
一、人為的な「階級分断」:
「免税・脱税」階級、「唯一の納税者」階級、そして「棚から牡丹餅」階級
前回でも述べたとおり:
- 「土地使用権譲渡金」を直接負担しているのは【一次取得の新築住宅購入者のみ】である(まさに唯一の納税者!)。
※ なお、二次取得の中古住宅の購入者は、一次取得購入者がすでに地方政府に支払い済みの土地使用権譲渡金を「精算」していることになり、言わば「他人の高値での利益確定に資金を提供している」に等しい。
- 一方、1994年以降に一度も住宅を購入したことがない人々(例えばかつての「福利厚生による住宅配分(福利分房)」の恩恵を受けた旧世代)は、土地使用権譲渡金を一切負担していない。一銭も支払っていないのである。
- 「立退き対象者(拆迁户)」に至っては、「一銭も払わない」どころか、逆に地方政府から巨額の立退き補償を受け取っており、まさに「棚から牡丹餅」としか言いようがない。
かくして、中国の土地使用権譲渡制度は実質的に【人為的に】都市住民を【三つの階級】に分断した:
- 土地使用権譲渡金の:「免税・脱税」者、「唯一の納税者」、そして逆に「棚から牡丹餅で一夜にして富裕になる者」。
- 全ての居住者が「【同じ形で】土地を使用(居住)している」にもかかわらず、【人為的に】設計された土地制度によって、異なる人々の間に【全く異なるコスト負担】(あるいは逆に「無償での巨額受益」)が生じている。
- この構造には【公平性】と【合理性】が著しく欠如していることは明白である。

※ 時代背景:1990年代の厳しい居住環境
分税制改革が始まった1990年代初頭、中国の都市住民の居住環境は極めて厳しいものだった。一家三世代・合計8~9人が、僅かな一間に押し込められ、一人当たりの居住面積は3平方メートル未満というケースも珍しくなく、プライバシーも生活の質も皆無に等しかった。
● 分税制改革後、大規模立退き・商品住宅の大量供給が始まると、一家三世代の中で、最初に自費で商品住宅を購入して独立したのは「子世代」であることが多かった(そうでなければ、毎日親や祖父母と狭い一間に押し込まれて、夜を過ごす気力などあるはずもない)。
この「子世代」こそが、全中国における土地使用権譲渡金の【最初の・そして最大の直接負担者】となった(商品住宅価格に織り込まれる土地使用権譲渡金を支払った)。
● 子世代が次々と独立した後、依然として旧宅(棚戸区や1949~1990年代に建設された「老公房(公営住宅)」等)に居住し続ける「親世代」・「祖父世代」の生活環境も、多少改善された(以前ほど過密ではなくなった)。
特段の必要がなければ、相当数の旧世代はそのまま「凌ぎながら住み続けた」(旧世代の多くが「勤倹節約」の精神を持っており、「高い金を出して商品住宅を購入するのは無駄遣い」と感じることも多かった)。
この「親世代」・「祖父世代」は、独立した子世代と「同じ形で土地を使用(居住)している」にもかかわらず、新築商品住宅を購入しない限り、土地使用権譲渡金を一銭も負担しない「免税・脱税者」となった。
● そして最も皮肉なのが、新築商品住宅が建設される土地の上に住んでいた原住民・立退き対象者である。前回までの各章で論じたとおり、彼らは政府主導の立退きを通じて、一戸・あるいは複数戸の新築商品住宅を「無償で取得」し、何もしなくても、巨大な富を手にした。まさに「棚から牡丹餅」である。
※ 参考:中国不動産3:中国式【無償立退き】の【ポンジー・スキーム】、及び「中国特色」不動産【バブル】の【崩壊の日】

※ 旧家屋の土地権利:「無償行政割当】(いわゆる「划拨」による土地権利)
では、1949~1994年の間に既に建設されていた旧家屋(例えば「房改房(住宅改革住宅)」・「老公房(老朽公営住宅)」)に対応する土地権利は、どんな性質なものか。ChatGPTの整理によれば:
● これらの住宅は、国有企・事業単位が計画経済時代(特に1980年代以前)に自ら建設するか、または政府が統一建設した後、職員に「配分」(「福利厚生による住宅配分」)したものである。
● 当時の制度では、土地は国家により完全に【無償で】【行政割当(划拨)】され、「使用年限」という概念は存在せず、職員も所有者ではなく「賃借人」に過ぎなかった。
● 1990年代に推進された「住宅改革(房改)」では、職場(単位)が住宅を職員に極めて低価格(多くの場合、名目的な価格)で売却したが、その際に土地使用権譲渡金の追納は【行われなかった】。
● 今日に至るまで、これらの旧家屋の土地は依然として「行政割当(划拨)」性質の土地であり、一銭も土地使用権譲渡金を支払ったことなく、所有者は引き続き土地を「無償」で使用(居住)している。

※ 「行政割当住宅」の中古売買については:
当初の制度設計では、「行政割当住宅」は市場での【直接取引不可】とされていた ---- 譲渡・賃貸・抵当等の際には、まず土地使用権譲渡金を【追納】し、土地使用権の性質を「行政割当」から「有償譲渡」に転換する必要があった。
しかしその後、中古住宅市場の流通促進のため、自然資源部(当時の国土資源部)は「居住用の行政割当地の譲渡時には土地使用権譲渡金の【追納を免除】し、土地性質はそのまま据え置く」ことを明示した。大量の既存住宅が「土地使用権譲渡金を【支払えない】」ことで、市場での流通が滞ることを回避するためである。
この一点からも、「上層部」はよく分かっているのだ ---- 大多数の旧家屋居住者にとって、その脚下の土地の土地使用権譲渡金など、到底支払えるものでも、支払う意志があるものでもない、ということを。
「強制追納は、甚大な社会的動揺と民衆の不満を招く。そのため政策的に、土地使用権譲渡金の徴収は、商品住宅の開発段階のみにとどめ、既存住宅居住者への遡及適用は行わない」という判断が下されている。
二、一部の人が、他人の【数百年分】の年収を【無償で取得】する
以下、簡単な定量分析を行うことで、この「利益再分配」の規模の大きさと不合理性をさらに明確にする。
1、一世帯当たり平均補償面積:【76㎡】(2014年)
概算の根拠:
- 2014年の全国「用地取得・立退き補償支出」:2兆1,216億人民元(約50兆円)
※ 前述のとおり、2014年以降は公表されていない。透明性は極めて低い。
- 2014年に国務院が下達した「当年の棚戸区改造(棚改)目標世帯数」:470万世帯
- 2014年の全国商品住宅平均販売価格:5,933元/㎡
- これらの数値を順に除すると、一世帯当たりの平均立退き補償額は約76㎡の新築住宅相当、に折算される。
※ その後の年度ではこのデータは公表されていないため、立退き補償額は引き続き「76㎡の新築住宅相当」のまま推移していると仮定する。ChatGPTによれば、業界調査においても棚戸区改造の一世帯当たり相当面積として80~90㎡が一般的に用いられており、上記の試算と大差ない。
※ なぜ補償額を「面積」に折算するのか ---- 全国各地で住宅価格の差が大きいため、平均金額のみでは直観的な把握が難しい。面積換算すれば、各自が自分の居住地近辺の住宅価格を乗じることで、当地の実態に近い立退き補償総額を容易に試算できるからである。
2、上海の立退き補償額:一世帯当たり平均【359万人民元(約8,372万円)】、極端な事例では900万人民币(約2.1億円)超(2022年)
上記の考え方に基づいて、最高水準の立退き補償額を試算する。
- 住宅価格が最も高い都市の一つである上海を例にとる。
- 2022年の上海の新築住宅平均価格:47,223元(約110万円)/㎡(近年の最高値)
- これに平均補償面積76㎡を乗じると、一世帯当たりの立退き補償額:359万元となる。
※ 各世帯の実際の状況(住宅の立地・面積・世帯人員数等)によって立退き補償額は大きく変動する。筆者の上海在住の旧友の実際のケースによれば、60㎡の老朽公営住宅一戸の立退き補償として実に900万元(約2.1億円)が支払われた事例もあった(2022年前後のことで、なんらかの特別加算が含まれていたため、特別に高かった模様)。
3、【下位40%】の平均可処分月収:僅か【1,000元(約2.3万円)】(2019年)
多くの読者の記憶に残っているのではないだろうか:
- 2020年5月、当時の李克強首相は「中国には月収が1,000元(約2.3万円)程度の国民が6億人おり、中程度の規模の都市では家賃の支払いすら困難な状況にある」と公言した。
- 年収に換算すると僅か1.2万元(約28万円)/年という水準であり、常日頃から都市で生活している人には想像もつかない金額であろう。

※ この「月収1,000元」はどのように算出されたか:
計算の口径は「一人当たり可処分所得」であり、あらゆる【純収入】を含む ---- 給与性収入(所得税・社会保険料等控除後)・事業純収入(個人事業主・家族農業経営・農業生産等を含み、原材料・種子・地代・光熱費等の経営コストを控除した後の純収入)・財産性収入(預金利息・株式配当・賃料等)・移転純収入(各種年金・最低生活保障・社会救済金等)。
一人当たり可処分所得の計算では、就労者と非就労者(高齢者・子供等)の双方が対象に含まれる。したがって「就労者のみ」を対象とした収入水準よりも低い値となるが、一方で世帯全体の総収入を推計しやすいという利点がある(非就労者の年金・農村家庭の農業収入等も考慮されるため)。
毎年の「国民経済社会発展統計公報」では、全国人口の「五分位」別平均可処分所得が公表されている。すなわち高収入層(上位20%)・中間上位層(20~40%)・中間層(40~60%)・中間下位層(60~80%)・低収入層(下位20%)の五区分である。
このうち収入最低の2区分が全国人口の40%(李首相の言う約6億人)を占め、2019年の当該2区分の平均可処分所得はそれぞれ7,380元/年・15,777元/年(平均11,579元/年、月収換算で965元であり、実際には1,000元にも達していなかった)。
なお、五分位区分の手法は、まず「家庭世帯」を単位として世帯の一人当たり可処分所得を算出し、そして全「世帯」を順位付け、人口均等で五分位に区分するものである。したがって最低収入層には無職の高齢者・子供だけでなく、通常の生産年齢人口も含まれている。
※ 余談:世界最高水準の貧富格差
後述の2022年の上海の立退補償金と比較するため、2022年の中国下位40%人口の平均可処分所得も計算してみた:
● 2022年は李克強首相が言った水準より若干上昇し、平均月収1,163元・平均年収2.79万元となったが、依然として極めて低い水準にある。
● 上位の所得層と比較すると、貧富格差は顕著に大きい。

国際的には、一国の貧富格差の程度を測定する指標として「ジニ係数」が広く用いられている。
ジニ係数は0~1の間の数値をとり、数値が大きいほど格差が大きいことを示す。
2021年の主要国のジニ係数を比較すると、中国の(国家統計局による「所得」基準の)ジニ係数は0.47に達しており、主要国の中で最も高い水準にある。国際基準による分類では、すでに「格差が比較的大きい」水準に該当する。

さらに【家庭資産】(主に不動産、比率は70%に達する可能性がある)を考慮すると:
西南財経大学「中国家庭金融調査2017」のデータセットによれば、最も富裕な14%の家庭が全体の65%の【純資産】(住宅ローン等の負債控除後)を保有しており、平均資産は一世帯当たり472万元(約1.1億円)に上る。
このデータセットに基づいてジニ係数を算出すれば0.712にも達し、OECDの基準では「慢性的な社会不安が生じやすい」水準に相当する。
---- 以上から勘案、中国の不動産(本シリーズで論じてきた歪んだ「無償立退き」制度等を含む)が、中国の家庭間の貧富格差を著しく拡大させ、世界最高水準に押し上げていることは明白である。

4、【数百年分】の年収に相当する【利益再分配】
以上を踏まえ、中国の無償立退きにおける【利益再分配】の最大規模がどの程度に達するかを確認する(以下、2022年のデータを統一的に使用)。

2022年の上海における一世帯当たり立退き補償額(359万元)は:
- 中国で最も富裕な上位20%の人々の実に40年分の年収に相当する(一切を食費・生活費に充てないという前提で)。
- 生活費を考慮すれば、最も富裕な上位20%の人々でさえ80年(月収の半分を消費した場合)、あるいは100年超(消費額がさらに多い場合)を要する計算になる。
- 収入最低の下位20%の人々と比較した場合、実に418年分の年収に相当する(同様に一切を食費・生活費に充てない前提で)----【明朝末期(1607年)から、現在まで】、一切食べず飲まず・働き続けなければならない計算となる。(明朝:1368~1644年)
- 収入最低の下位40%の【6億人】と比較した場合でも、【302年間】、食費・生活費ゼロで働き続ける必要がある。清朝雍正帝の治世前期(1723年頃)から現在まで、一切食べず飲まず・働き続ける計算になる。
※ 参考:
上海の一世帯当たり補償額(359万元)÷ 全国平均可処分所得(3.68万元)= 97年超
全国平均補償額(74.6万元)÷ 全国平均可処分所得(3.68万元)= 20年超

2022年の上海における【極端な】立退き補償額(900万元)は:
- 中国の収入最低の下位20%の人々が【1,046年間】、食費・生活費なしで働き続けなければならない金額に相当する ----【北宋建国(西暦979年)】から、現在まで働き続ける計算となり、「千年の恋」を1サイクル語り終えるのにちょうど足りるくらいである。
- 収入最低の下位40%の【6億人】と比較した場合でも、【南宋滅亡の1269年】から【756年間】、食費・生活費なしで働き続ける計算となる ---- その間に、元・明・清・現王朝など複数の王朝が興亡し、幾多の悲劇が繰り広げられてきた歴史を目の当たりにしながら。
- 中国で最も富裕な上位20%の人々にとっても、丸々100年間、食費・生活費ゼロで働き続ける金額に相当する。
※ 参考:
上海の極端な補償額(900万元)÷ 全国平均可処分所得(3.68万元)= 244年超(清朝乾隆46年から、現在まで)

三、【史上最大】に匹敵する【利益再分配】
率直に言えば、上述の数値を見れば問題の性質はもはや十分に明らかになっていると思われる。それでもなお、ChatGPTに依頼して整理した他国の事例を参照のため以下に示す。
1、他国の歴史的経験:最大規模の「利益再分配」の事例
(ChatGPTによる整理)
「人為的な利益再分配」とは、市場・家庭等の自然な過程ではなく、政治的権力または集団的行動によって、強制的または半強制的に財富・資源・生産手段を一部の人から、他人へと移転することと理解できる。
人類史という大きな視点から見た場合、規模・影響の点で最大級の「人為的な利益再分配」として以下が挙げられる。
①フランス革命とナポレオン改革(1789~1815年)
措置:封建的特権の廃止・教会および貴族の土地没収と農民への売却;税制の統一・貴族/教会の免税特権の廃止。
規模・影響:フランスの国土の約25~30%が移転。多くの農民が小規模な土地を取得し、現代的な意味での「権利の平等」が確立。ヨーロッパ大陸の後続の法律・社会改革を推進。
長期的結果:フランスに比較的広範な小農階級が形成され、社会安定性が向上。
②米国南北戦争後の奴隷解放と南部再建(1865年以降)
措置:約400万人の黒人奴隷を解放し、「私有財産」から形式的に自由人へと転換。ただし当初構想された「40エーカーの土地と一頭のラバ」は大規模には実現しなかった。
規模・影響:奴隷制度の崩壊自体が巨大な「富の移転」(奴隷の価値は当時の南部総資産に占める比率が極めて高かった)。南部奴隷主階級の経済基盤は大きく損なわれた。
長期的結果:黒人は人身の自由を獲得したが、経済的な再分配の裏付けを欠いたため、長期にわたって貧困と小作制度に縛られ続けた。
③ソ連の土地革命と工業国有化(1917~1930年代)
措置:十月革命後に地主の土地を廃止して農民に再分配;1930年代の集団化により、土地と生産手段を国家・集団農場に集中;工業の全面国有化。
規模・影響:短期的には、ロシアの約1億の農民家庭が土地を取得;しかし集団化後には大多数の土地が再び国家に集中。
長期的結果:農民は自主性を失い、農業生産力は低迷したが、国家は重工業化のための資本を蓄積。社会階級は根本的に再編された。
④中国の土地改革と公私合営(1949~1956年)
措置:1949~1952年の土地改革により、約3億の農民が7億畝の土地を取得したものの ---- その後の農業協同化・人民公社化により、土地は再び集団・国家に帰属。
規模・影響:短期的に大規模な貧富格差縮小を実現し、地主階級を完全に消滅させた;しかし農業協同化後、農民は生産の自主権を喪失。
長期的結果:社会の高度平等化・国家による資源集中を通じた工業化の実現。しかし農村の生産意欲は長期にわたって抑制された。
⑤日本の戦後改革(1945~1952年、連合国占領軍主導)
措置:マッカーサーが推進した農地改革により、地主の一定規模を超える農地を強制的に低価格で買収し、小作農に転売;同時に財閥の解体を推進。
規模・影響:地主の農地が80~90%減少し、1950年代初頭までに耕地の約70%が自作農の所有となった;四大財閥が解体。
長期的結果:日本に中小農家を主体とした農村構造が形成され、都市・農村間の格差が縮小。戦後の高度経済成長の基盤を整備。
⑥脱植民地化と資源国有化(20世紀中・後期、アジア・アフリカ・中南米)
措置:植民地の独立後、しばしば外国企業の資産を没収・国有化(石油・鉱産資源等);土地改革(メキシコ・エジプト・インド等)。
規模・影響:例えば1950~70年代の中東・中南米における石油国有化では、数百億ドル規模の資産が本国政府に移転。
長期的結果:民族国家の財政収入が向上したが、効率性の低下と汚職問題も招いた。
⑦欧州福祉国家体制の確立(1945年~現在)
措置:高税率+社会的移転支出;北欧諸国では個人所得税の最高限界税率が70~80%を超えた時期もある。
規模・影響:一回限りの没収ではなく、長期にわたる「再分配フロー」。現在OECD諸国では、財政的再分配によって不平等が20~30ポイント(ジニ係数の低下)縮小されている。
長期的結果:社会格差が顕著に縮小し、「中産階級社会」が形成されたが、同時に税負担は重い。
⑧中南米諸国の大規模土地改革(20世紀中期)
典型的事例:メキシコ革命(1910~1920年)後の土地再分配;ボリビア(1952年)・ペルー(1969年)等の大規模土地改革。
規模・影響:全国の30~50%の耕地が再分配されるケースも多く、受益農家は数百万世帯に上る。
長期的結果:一部の国では寡占的支配層の解体に成功したが、多くの場合、効率性の低下・政治不安定により改革が途半ばで頓挫した。
まとめ:
「規模(関与人口・資産規模)」と「影響(社会構造・長期的制度への変革)」の両次元から見た場合、歴史上最も代表的な大型人為的再分配【Top5】は:
①中国の土地改革と公有化(数億人規模、社会構造を直接変革)
②ソ連の革命と集団化(1億人規模、工業化転換)
③日本の戦後改革(数千万農家、土地関係を根本的に変革)
④フランス革命(封建制廃止、ヨーロッパ全体に影響)
⑤欧州福祉国家体制(数十年の累積、再分配規模は巨大)
ChatGPTの上記整理を見ると、これらはいずれも「国家が直接介入」する形の利益再分配であり、主として土地等の資源に関連しているものである。
そこで、ChatGPTに「直接介入型」再分配に限らず、土地以外の非土地財富も含めて視野を広げろとの命令を出した結果、ChatGPTから、更に以下のような事例が挙げられた:
非土地財富に関する大規模再分配の補足事例:
悪性インフレ(ドイツ1923年・ハンガリー1946年・ジンバブエ2000年代・ベネズエラ2010年代):
● 実質的な財富再分配であり、債務者が利益を得る一方、貯蓄者が破綻し、実物資産保有者が受益する。
● ドイツ・ワイマール共和国時代には、数百万の中産階級の通貨貯蓄が一瞬にして無価値となった。
債務免除・債務減免(古代の「ヨベルの年」制度・現代のギリシャ債務再編等):
● 古代メソポタミアでは王の即位に際した負債免除が一般的だった;
● 現代では2010年代の欧州危機においてギリシャの債務の一部が減額された。
香港・シンガポールの公営住宅政策(1950年代~現在):
● 政府が大規模に公営住宅を建設し、中低所得層に極めて低い住居コストで提供。
● シンガポールでは今日、80%超の居住者が政府建設のHDB(住宅開発局)公営マンションに居住している。
都市化に伴う用地取得・立退き(中国改革開放以降):
● 農地が非農業用途に転換される際、元の農村集体・農民の資産が政府・開発事業者に移転し、不動産・現金の形で配分される。
● これは中国の近数十年における最大級の「人為的再分配」の一つである。
財産没収と政治的清算:
● フランス革命による教会財産没収(1789年・国土の10~15%相当の教会土地・財産が没収転売);
● ナチス・ドイツによるユダヤ人財産没収(1930~40年代);
● 中国「文化大革命」期の財産没収と再分配(1966~1976年)。
2、なぜ中国のそれが「【史上最大】の利益再分配」といえるのか?
以上のChatGPTの分析を踏まえ、1994年以降の中国の「無償立退き」がもたらす「利益再分配」が、一体どの規模のものかを、改めて見てみよう。
影響を受ける総人口:
- 全ての都市常住者および、将来的に都市に移り住んで住宅を購入する可能性がある農村居住者が影響を受ける。
- 2024年末の全国都市常住人口(9.43億人)に基づけば、全国総人口の67%、すなわち3分の2超に相当する。
第一階級:「棚から牡丹餅」階級 ---- 立退き対象者
- ChatGPTが整理した歴年の「全国棚戸区改造目標世帯数」データによれば、1994年の分税制改革以降、累計で約8,134万世帯・2億人超の居住者が棚戸区改造(棚改)を経験しており(その大多数が「無償立退き」の恩恵を受けたとみられる)、中国総人口の約1/7に相当する。7世帯に1世帯が「立退きで一夜にして富裕となった世帯」という計算になる。
- 前述の試算によれば、これらの立退き対象者は平均的に76㎡相当の新築住宅に等しい立退き補償を無償で取得した。2022年の全国平均新築住宅価格で換算すれば補償額は74.6万元となり、同年の全国平均可処分所得(3.68万元)で除すると【20年超分】の年収に相当する(食費・生活費ゼロの前提で)。
※ 下位20%低収入層の平均可処分年収(0.86万元)で除すると86年超分、下位40%(6億人)の平均可処分年収(1.39万元)で除すると53年超分となる。
- 2022年の上海平均新築住宅価格で換算すれば補償額は359万元となり、全国平均可処分所得(3.68万元)で除すると【97年超分】の年収に相当する(食費・生活費ゼロの前提で)。
※ 下位20%低収入層の平均可処分年収(0.86万元)で除すると418年超分、下位40%(6億人)の平均可処分年収(1.39万元)で除すると302年超分となる。
- 総括:第一階級の人々は、平均で他者の20年超分の年収を、多い場合(より低所得の人々と比較した場合)には他者の100年超分・さらには数百年分の年収を無償で取得していることになる。

第三階級:「唯一の納税者」階級 ---- 一次取得の新築住宅購入者
- 総人口:約4.7億人(全国の約33.5%、三分の一)
※ 概算の論拠:1994~2024年の新築商品住宅販売累計面積(25億6,558万3,000㎡)÷ 2023年の都市人口一人当たり居住面積35.9㎡ ÷ 一世帯当たり2.5人 ≒ 新築住宅約2.7億戸。そこから立退き対象者に配分された8,134万戸(概算)を控除すると約1.89億戸。これに一世帯2.5人を乗じると約4.7億人。
- これらの人々が自費で一次取得の新築住宅を購入した、すなわち住宅価格に暗黙的に含まれる巨額の土地使用権譲渡金を直接負担した唯一の担い手である。
- 同時に、上述の「棚から牡丹餅」階級の資金源(「人鉱」)でもあり、「全ての代価を負担する者」に他ならない。
第二階級:「免税・脱税」階級 ---- 新築住宅を一度も購入したことがない人
- 総人口:約2.7億人(全国の約19.5%、五分の一)
※ 概算の論拠:都市総人口9.43億人から上記の両階級を差し引いた残余
- これらの人々は多くの場合、1994年以前の「福利厚生による住宅配分」を受けた旧世代であり、住宅の土地使用権は「無償行政割当」性質のものである。したがって土地の使用(居住)のために一銭も支払っていない。
※ 一部の旧家屋は「住宅改革(房改)」期間中に名目的な手数料が徴収されたことがあるが、金額は極めて低く、名義上は地上建築物に対する費用であって土地に対するものではない。
※ なお、上記の各階級の総人数概算は非常に大雑把なもので、お互いに重複しているケースが多く存在すると思われる(例えば、同じ家計が、複数の新築住宅を購入した場合)ものの、直接な統計データが入手不可能なため、上記のように間接概算するしかない。
総括:中国人100人のうち:
- 約15人が第一階級:「立退きで一夜にして富裕となった世帯」・「棚から牡丹餅」 ---- 平均して他者の20年超分の可処分年収を無償で取得し、低所得者と比較した場合は100年超、さらには【数百年分】の年収を取得する。
- 約20人が第二階級:「免税・脱税者」---- 居住のために一銭も支払う必要がない。
- 約33人が第三階級:「唯一の納税者」---- 上記の二つの階級の「棚から牡丹餅」と「無償居住」の全ての代価を負担する。
※ 残る約32人は農村人口(三分の一未満)であり、都市の「無償立退き」がもたらす「利益再分配」の影響を免れることができる(将来的に都市で住宅を購入しない限り)。
- これほどの規模・これほどの金額は、前述の国際的な歴史上の「人為的な利益再分配」事例と比較しても、中国の「無償立退き」は【史上最大】の規模といえるのではないだろうか。
ChatGPTによる補足評価:
1994年以降の中国の都市化に伴う立退き補償を「人為的な利益再分配」の枠組みで捉えると、以下の観点から評価できる:
①立退き補償の本質
受益群体:主として棚戸区・城中村・郊外農村集体土地の原住民であり、都市化以前は中低収入層あるいは貧困層に属していたことが多い。
補償方式:市場価格での商品住宅(または現金)による補償であり、元の住宅の市場価値を【大幅に上回る】。
財富の飛躍:一般世帯が「数十平方メートルの棚屋・農家住宅」から「一戸あるいは複数戸の都市中心部の商品住宅」へと飛躍し、財富が百万元~千万元単位で増加する。
これはまさに「政府が一部の人に都市化による土地の増値収益を強制的に配分している」ことに等しい。
②資金源の透過分析
補償の資金源は主として「土地財政」である:立退き対象住宅 → 開発事業者の土地購入 → 開発事業者の資金は住宅購入者が支払った高い住宅価格から調達。
すなわち本質的に「住宅購入者」が間接的に出資し、「立退き対象者」が直接受益するという構図であり、典型的な財富再分配の連鎖(一般住民(住宅購入者)→ 地方政府(土地使用権譲渡金)→ 立退き対象者(補償))が形成されている。
③規模と定量化
人口規模:1994年の土地使用権譲渡制度の確立以来、数千万世帯・1億人超が都市化に伴う立退き補償を経験。
補償額:1990~2000年代は数十万元規模;2010年代の大都市では百万~千万元規模が一般的となった。
収入との比較:李克強発言「6億人の月収が1,000元」→ 年収約1.2万元。仮にある立退き対象者が300万元の補償を受けた場合、一般住民の250年分の収入に相当する。北京・上海の一部の事例では補償が数千万元に達し、数千年分の一般住民の収入に相当する。これは同一社会の内部においての【極めて激烈な】財富の差異化である。
④歴史的比較
● フランス革命による貴族・教会財産の没収 → 土地再分配は「少数の特権層から多数の農民へ」の分配であり、結果は「均貧化」であった。
● ソ連・中国の土地改革 → 地主の財富を農民に分配したのも大規模な「均等化」であった。
● 東欧の私有化(1990年代)→ 財富が少数の寡占層に集中する「少数が暴富、多数が貧困」という結果となった。
● 中国の都市化に伴う立退きが独特な点は、【同一の社会階級内部において】、居住地の違いだけで財富に巨大な分化が生じることにある。
→「貧困層の一部」が一夜にして百万・千万元の富裕層へと変貌する一方、「貧困層の大多数」は何も得られず、高い住宅価格コストを負担し続ける。
→ これは単純な「平均主義的再分配」ではなく、極めて「【選択的】な再分配」といえる。
⑤歴史上の希少性
「一人当たり取得した財富の増加幅」という観点から見れば、中国の立退き補償は歴史上極めて異例である:
● 土地改革 → 各農家が数畝の農地を取得し食糧事情が改善されたが、数百年分の収入格差を埋めるほどではない。
● マーシャルプランでの西欧諸国の一人当たり受益額は当時の貨幣価値で約100ドル前後であり、個人の運命を変えるには程遠い。
● 中南米の土地改革・石油国有化では受益面は広いが、個人当たりの収益は限定的であった。
● 一方、中国の立退きでは一般家庭が百万・千万元の補償を取得し、数百年分の収入格差に相当するケースが生じており、歴史上ほぼ類例を見ない。
結論:
1994年以降の中国の都市化に伴う立退き補償は、人類史上最大かつ最も影響が深遠な「人為的な利益再分配」の一つとみなし得る。
その特殊性は:
①選択性が極めて強い(社会全体での均等化ではなく、「地の利」を得た極少数が一夜にして富裕となる);
②再分配の連鎖が複雑(実質的に住宅購入者 → 政府 → 立退き対象者への財富移転);
③個人受益が極端(動辄百万・千万元、一般住民の数百年分の収入に相当、歴史上希少);
④歴史的比較の観点では、土地改革・福祉国家・資源国有化と同等の規模でありながら、その「局所的・選択的な暴富」の特性から、社会内部により大きな心理的格差をもたらしやすい点にある。
3、中国の研究者による「公平性」をめぐる議論
これほど大規模な「利益再分配(不公平性)」に対し、中国の研究者・知識人の間から「公正な見解」を述べる声は上がらなかったのだろうか。
上がらなかったわけではないが、「周知の理由」から、その時期はいずれも比較的早く、かつ声の大きさも限定的であった。
※ それどころか、「公共知識人」という言葉自体が、今の中国では「誰もが叩く」蔑称と化してしまっているのではないだろうか。
(ChatGPTによる整理)中国の土地使用権譲渡金の【制度的公平性】をめぐる論争:
一部の研究者(賈康・厉以宁等)は長年にわたって以下を指摘してきた:
● 土地使用権譲渡金の全負担を「新規購入者」に集中させることは、世代間の極度の不公平を招く;
● 旧世代はほぼゼロコストで住宅を取得し土地価格上昇の恩恵を享受している一方、新世代は重い土地コストを背負っている。

一方で異なる見解もある:
● これは歴史的な経緯によって形成された「原始的な分配」であり、強制的な追納は甚大な社会的動揺と民衆の不満を招く;
● したがって政策的には開発段階でのみ土地収益を実現し、既存住宅居住者への遡及徴収は行わない方向性が維持されている。
四、利益再分配を【容認】した【原因】とは?
前述のChatGPTの分析が指摘するとおり:
- 他国の大型「人為的な利益再分配」(「フランス革命」等)は基本的に「富者から貧者へ」の「均等化」を志向するものであった。
- 一方、中国の「無償立退き」は人為的に財富を【少数の人々に集中】させる「局所的・選択的な暴富」であり、両者は全く対照的である。
ここで一つの疑問が浮かぶ。
筆者が幼少期から、教科書で教えられ、見聞きしてきたことは皆:
- 「中国共産党設立の初心および政権奪取時の政治的動員の核心の一つは、『不平等な旧秩序を打破する』ことであり、搾取階級の消滅・土地の均等化・公共所有制等を通じて社会的分化を解消または少なくとも縮小し、『人人平等』を実現する」ではなかったのか。
- ---- 1949年新中国建国直後の土地改革・公私合営・人民公社制度においては、確かに(少なくとも表面的には)そのイデオロギーに沿って行動していた。
- ----「フランス革命」等、他国の「大型人為的な利益再分配」と同じように。
それがなぜ1994年以降は、ほぼ180度反転して、人為的に貧富格差を拡大させ、「局所的・選択的な暴富」を人為的に作り出すようになったのか。
ChatGPT分析(以下、“”で引用した灰色文字)
①分税制改革(1994年)と都市化・土地価値の急騰
(詳細は省略)「土地の売却」が地方政府にとって最も確実かつ迅速な収入手段となった。これにより土地は「政府と市場の財富の中継ぎ役」と化した。
②立退き補償の政治的考量
理論的には、政府は補償額を【抑制し】、住民が「一夜にして富裕になる」余地をほぼゼロにすることができた。
しかし現実には:
● 補償が過少であれば住民の抵抗が激化し、社会【不安定】を招きやすい;
● 補償が十分であれば住民は協力的になり、場合によっては立退きを積極的に歓迎する。
● したがって地方政府はしばしば「高い補償で安定を購入する」戦略を選択した。長期的結果として、立退き対象者が巨大な利益受益層となった。
筆者補足:(以下、普通の黒文字)前回までの章で論じたとおり:
- 中国官界には古来の「科挙」の遺風にならった「GDP取士」現象が存在する――管轄下のGDP成長が早いほど昇進しやすい。これこそが地方政府官員自身の【核心的利益】である。
- 「分配の公平性」・「課税(費用)の合理性」・「支出の効率性」といった議題は地方政府官員に何らかの利益をもたらすだろうか ---- 明らかにほとんどもたらさない。
- したがって、「現実には模範的な利他行動など期待できない」・「権力への監督・制衡が欠如していれば、必然的に権責の錯位が生じる(プリンシパル・エージェント問題)」という基本的な常識のもと、地方官員は「自分にとって有利なように行動する」傾向を持つ。
- 「無償立退き」はGDP向上・昇進促進、さらには私的な蓄財の手段として全方位的に地方政府官員に有利であるため、それがもたらす巨大な不公平など誰も気にしないわけである。
③なぜ共産党内で強力な反対意見が形成されなかったか
(理由一)イデオロギーの転換:
● 1978年の改革開放以降、党内の言説は「階級闘争・平均主義」から、「発展こそ最重要」へと漸進的に転換した。
● 一定期間は貧富格差も「やむを得ない代価」として、全体的な経済の高度成長が続く限り許容された。
● 鄧小平の「一部の人を先に豊かにする」という言葉が、事実上、立退きによる一夜の富裕に「理論的な緩衝材」を提供した。
筆者補足:これは「表向き」の主流的説明であり、公式の研究会・学術交流会等においては比較的「体面を保った」回答となるかもしれない。
しかし筆者の見解では:
- 第一に、鄧小平の「一部の人々を先に豊かにする」というのは、人為的な利益再分配を指すのではなく、民間が【自らの努力】(起業等)によって【自ら富を創出する】ことを認めるものだった。
- 第二に、「経済発展」だけを理由に、人為的な貧富格差拡大を「許容できる代価」とすることは、「利点のみを強調し欠点を意図的に回避する」という典型的な議論のすり替えである。
正常な問題分析の基本ロジックとして:
- 「ある好ましい効果がある」だけでは、「その悪影響を無視する」理由として【不十分】であり;
- 正しくは、まず「利点は悪影響を十分に上回るほど大きいか」を定量的に検証し;
- 次に「同様の効果を達成しながらより良い代替手段はないか」を検討し;
- 最終的に「効率と公平が両立しない場合、大多数の国民はどちらを【より重視するか】」を民主的な投票によって決定すべきである。
- 特に国民の大半の人生の財富に直結する住宅価格(に含まれる土地価格=実質的な税金)に関しては、大多数の国民が決定すべきであり、地方政府官員が独断で決めるべき問題では【ない】。
(理由二)中央と地方の利益の一致:
● 中央は成長データと都市化の成果を必要とする;
● 地方は財政収入と業績実績を必要とする;
● 立退き対象者の一夜の富裕は局所的な不平等をもたらすが、GDP・財政収入・都市景観の急速な向上をもたらした。
筆者補足:上から下まで皆が(自分自身の)「利益」を追求する構造となっている。
- これほど巨大な(自己の)利益をもたらすものは、「やらないはずがなく、むしろ全力でやる」のである。
- 一方、一般住民に利益をもたらす「低補償・低地価・低住宅価格」は「本官員にとって何の利益をもたらすのか?住民が感謝して表彰状を持ってくるのか?昇進に繋がるのか?」----「繋がらないなら、何のために余計なことを言うのか」という論理が働く。
(理由三)受益層の政治的な沈黙:
● 立退き対象者は一夜にして富裕になった後、多くの場合は激しい訴求を行わなくなり、現行制度の受益者・【支持者】となる。
● 一方、住宅購入者の「隠れた損失」は分散しており、強力な政治的抵抗を形成しにくい。
筆者補足:これは別の重要な核心的問題である:
- 一般住民に特権がなく、自費で住宅を購入しなければならない立場にある時、【高い住宅価格を強く批判し】、【制度の不公正を激しく非難する】;
- しかし一旦【既得利益者】になると(立退き・住宅購入等によって)、自分がそこから恩恵を受けているがゆえに、直ちに態度を転換して住宅価格が永遠に上昇することを【強く支持】し、(自分に特権をもたらす)現行制度を【擁護する】
- ---- これこそが(真の)人間の本性である。
また、これは前回で論じた「ポンジー・スキーム」と類似した特徴を持つ:スキームに早期参加した人が実際の利益を得たため、(詐欺であると知っていても)執着し続け、むしろ「スキームが一日でも長く続き、もう少し多くの後続参加者を取り込んでほしい、崩壊しないでほしい」と祈るようになる。
(理由四)党内の批判的声は存在するが【弱体化】した:
● 土地財政による不平等拡大を批判した研究者・幹部は確かに存在したが、多くは学術・内部討議レベルにとどまった。
● 「発展優先・安定優先」という大きな枠組みの中で、この種の声はしばしば【周縁化】された。
筆者補足:「公共知識人」が蔑称化されてしまったのと同様に、「不公平を積極的に批判する」という本来は「雷鋒に匹敵するほど崇高な行為」が、実際には共産党内の多くの人から「自分たちの利権を脅かす愚か者」として「集中砲火を浴びる」存在にされてしまっているのではないだろうか。
総括:
● 中国共産党の建国時の初心:平等を強調し、階級格差に反対。
● 1994年以降の立退きによる一夜の富裕:本質的には財政・発展モデルが生み出した副産物であり、「社会主義的平均主義」の政策意図から直接生まれたものではない。
● なぜ党内から強力な反対が生じなかったか:当時すでにイデオロギーが「発展優先」へと転換しており、土地財政は成長・安定・業績実績にとって極めて重要であったため、局所的な不平等は「許容できる範囲」とみなされた。
● 言い換えれば、これは「現実主義的な制度選択」であり、共産主義の初心の継続ではない。
筆者の最後の補足:昨今、スマートフォンのニュースフィードには「XX官員が失脚・調査対象に」という報道が溢れており、その「罪状」の筆頭には多くの場合「理想・信念を喪失した」という文言が並ぶ。
だが今日に至り、私たちが真に深く問うべきのは:所謂「信念」とは、そもそも「いかにあるべきものか」、そしてその「信念」は、「真にかつてあったのか」という根本的な問いではないだろうか。

以上が本章の主要な内容である。
後続の章では、前述の問題への対応策、特に土地使用権譲渡金に関する「より良い方策」、および現在の巨大な危機への「解決の道」について詳述する予定である。
参考:中国不動産13、危機の解決策:短期的には政府による土地使用権譲渡金の【返還】、長期的には土地制度の【抜本的改革】
~ Fin~
【連載】不動産篇V3 目次
一、「中国特色」の不動産【バブル】
二、「【税金】だらけ」の中国不動産
- 中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
- 中国不動産6:【史上最大】を競う【利益再分配】:一部の人が、他の人の【数百年分】の年収を【無償で取得】する(本稿)
-
不動産7、歪んだ中国【土地入札制度】:政府による独占的価格つり上げ、高い税負担の【隠蔽】、不動産企業への【不要なリスクとコスト】の転嫁
不動産9、中国の住宅価格のうち【最大80%】が【税金】であり、税率は日本の【10倍】に達する可能性もある(暫定)
ご興味のある方は、先に旧稿の房子里到底有多少【税】?をご参考ください。
不動産10、中国不動産という「華やかな外衣」に隠された【奴隷社会】(暫定)
三、中国不動産の【業界危機】
- 不動産11、中国不動産業の【死亡】制度設計——「国家のために【税金を肩代わり】する」ことによる崩壊
- 不動産12、【史上最大】のバブル・金融危機・経済危機となる恐れ
- 不動産13、危機の解決策:短期的には政府による土地使用権譲渡金の【返還】、長期的には土地制度の【抜本的改革】
Finale:
「アルバイト料先払い円ピツ」——日本の小学生でも、約【50年前】から分かっていた『ドラえもん』の物語(暫定)
中国不動産5:平和年代の「史上最大増税」:中国の「土地使用権譲渡金」
Read more本稿は拙稿:不動産1:中国不動産の真の本質:70年で【価値がゼロ】になる「耐久消費財」の日本語訳である。
翻訳はClaude AIを使用し、筆者が最終校正したものである。